同じ想いであるのに重なり合う事はない。

 

同じだけの愛情を向けあっているというのに相手には気付かせない。

 

 きっとその想いを伝えれば、結ばれるだろう。

 

 けれど・・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 この世界にはどんなに想っていても、どんなに愛情を向けていても、

 

 

 結ばれてはいけない相手がいる・・・・・・・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

硝子越しの想い

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ねぇ、恭也・・・・、あんたいい加減に彼女の一人でも作りなさいよ」

 

 おかーさんのその言葉を聞いて、私の胸は大きく、高く鳴った。

 

 いつもおかーさんがお兄ちゃんに言っている言葉。

 その度に私の心臓は痛いくらいに激しくなり続ける。

 

「いきなりどうしたというのだ、高町母よ」

 

 お兄ちゃんがいつものようにおかーさんに言葉を返している。

 それが少しだけ私を安心させる。

 

 きっとこれからいつもと同じような話し合いになるんだ。

 

 

「どうしたも何もあんたねぇ、大学生にもなって恋人の一人もいないなんて・・・・・、はぁ」

 

 おかーさんがいつものようにため息をはく。

 

 お兄ちゃんは大学生になったけど、未だに恋人を作らない。

 その分、お兄ちゃんは私に、なのはに時間を使ってくれてる。

 それは本当に嬉しい。

 どうしようもないくらいに嬉しい。

 

「何度も言っているようだが、俺を好きになってくれるような酔狂な人などいない」

 

 お兄ちゃんの言葉には相変わらずむっとくる。

 だって、なのははこんなにもお兄ちゃんのことが好きなのに。

 

 それ以外にもお兄ちゃんが好きな人は一杯いるのに、

 

 

 けれど、お兄ちゃんは気付こうとしていない。

 

 でも、それでいいとなのはは思う。

 

 だって、そうしている間はお兄ちゃんはなのはを見てくれる。

 

 

 例え、妹だとしても・・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「全くもう、あんたはそれだから、そんな事じゃなのはの方が先に恋人を作っちゃうわよ?」

 

 かーさんの言葉に俺の心臓が痛いほどに跳ねていた。

 

 何時もの問答の後の、何時もの言葉。

 それが酷く俺の心を抉る。

 

「にゃにゃにゃ!? おかーさん! なのはにはまだ早いです!!」

 

 何時ものようになのははかーさんの言葉を否定する。

 

 それが情けないほどに嬉しい。

 なのはがまだ、恋人を作ろうとしないことが。

 まだ、なのはがこう言っている間は、俺はなのはと共にいることが出来る。

 

 

「そうだよね、お兄ちゃん?」

「あぁ、そうだな。なのはには少し早かろう」

 

 なのはが聞いて来る言葉に俺の願いも込めて返す。

 

 だが、その答えがまるでなのはの心を抉っているかのように痛そうな表情をしている。

 

 その事にかーさんは気付いていない。

 

 俺だけが気付いているなのはの表情。

 

 

 なのは、何故、そんなにも辛そうな表情をする?

 何故、そんなにも悲しそうな表情をする?

 

 俺が悪かったというのだろうか?

 だが、俺はなのはの為と・・・・、

 

 違うな。俺はただ、俺の心に従ったまでだ。

 まだ、なのはの傍にいたいという俺の醜い想いに従ったまでだ。

 

 

 

 

 なのはの傍にいたい。

 この想いがどんな想いなのかは分からない。

 兄としてなのか、父としてなのか、それとも男としてのものなのか。

 

 だが、それでも俺はなのはの傍にいたい。

 何故なら、なのはの事が誰よりも好きだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月明かりを浴びながら、血が半分しか繋がらない兄妹が縁側にて寄り添っている。

 

 妹は兄に寄り添うように、兄は妹を包み込むかのように。

 

 

「ねぇ。お兄ちゃん。なのはにはまだ恋人を作るのは早いかな?」

 

 突然の言葉に恭也は逡巡する。

 

 このぐらいの年頃なら初恋ぐらいは済ませている物だ。

 

 だが、それを応えてもいいものかと恭也は考える。

 

 何故なら、正しく答えればなのはは自分の元を去るかもしれないのだから。

 

 

「人それぞれだと思う。だから、焦る必要はない」

 

 無難な回答。

 

 しかし、その中に少しだけ自分の本心を混ぜた、小さな願いを込めた回答。

 

「そっか・・・・、でもお兄ちゃんは遅いぐらいなんだよね?」

 

 なのはが辛そうに恭也に向けて、言葉をつむぐ。

 

「俺にももしかしたら早いのかもしれない。俺には今しなければいけないことで手一杯だからな」

 

 恭也のその言葉になのはは嬉しそうに恭也に寄り添う。

 

 まだ・・・・、まだ、兄は自分の下を離れない。それがなのはには嬉しかった。

 

 

 

 

「なのはには好きな人はいないのか?」

 

 唐突に呟く恭也。

 

 だが、その表情はとても痛々しい。

 

 聞きたく等ないのに、・・・でも・・・・・・どうしようもなく聞きたい答え。

 

 

「いるよ」

 

 恭也の言葉に簡潔に応えるなのは。

 

 その表情は何よりも幸せそうな表情。

 

(今、なのはを包み込んでくれている、なのはのお兄ちゃんで、おとーさんで、唯一人の男の人)

 

 そう、今この時、傍にいてくれている恭也になのはは好意を向けている。

 

 

 

 その答えが、恭也には辛かった。

 自分が知らないであろう男に好意を寄せているように見えたのだから、

 

 

 

 

「お兄ちゃんは?」

 

 先ほどの恭也と同じように痛々しそうに呟くなのは。

 

「いる」

 

 その言葉に恭也はなのはと同じように簡潔に応えた。

 

(今、この腕の中にいる、俺の妹にして娘、そして女性)

 

 何よりも、幸せそうになのはに思いを寄せて応えた。

 

 

 

「そっか」

 

 その答えがなのはには辛かった。

 自分の知らない女に好意を寄せているように聞こえたのだから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 月を見ながら、二人は自らの心に、今最も傍にいる相手に誓う。

 

(なのは、ずっと傍にいる)

(お兄ちゃん、ずっとそばにいるよ)

 

(なのはが好きな男と結ばれて、俺から離れる事になろうとも)

(お兄ちゃんが好きな女の人と付き合って、なのはだけを見なくなったとしても)

 

(ずっと傍にいる)

(ずっとそばにいるよ)

 

(何故なら、俺はなのはを・・・、

(だって・・・、なのははお兄ちゃんを・・・、

愛しているから))

 

(世界中の誰よりも)

(世界中の何よりも)

 

(なのはを・・・、

(お兄ちゃんを・・・、

愛している))

 

(だから・・・、

(だから・・・、

幸せになって))

 

 

 

(許されるのなら、この手でなのはを幸せにしたい)

(本当なら、お兄ちゃんと幸せになりたい)

 

(しかし・・、

(けど・・・、

兄妹だから出来ない))

 

 

 

(この想いを口にしたい)

(この気持ちを伝えたい)

 

(けれど、それは許されない)

(それはきっと認められない)

 

 

(だから、俺とは別の男と幸せになれ)

(だから、なのはとは別の女の人と幸せになってね)

 

(傍で幸せそうななのはを見ているだけで俺は幸せだから)

(そばでお兄ちゃんの幸せそうな顔を見てるだけでなのはは幸せだから)

 

(なのはの笑顔がその男に向いているのはきっと辛いだろうが)

(お兄ちゃんがなのは以外の女の人に笑うのを見るのはきっと苦しいと思うけど)

 

(それでもなのはが幸せなら

(それでもお兄ちゃんが幸せなら

きっと耐えられる))

 

 

(俺の妹、俺の娘、俺の最愛の人よ)

(なのはのお兄ちゃん、なのはのおとーさん、そして誰よりも愛している人)

 

(頼むから、

(お願いだから、

幸せになったとしても傍にいる事を許して欲しい))

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 同じ想い、同じだけの想い。

 

 されど重なり合う事無き想い。

 

 それはまるで硝子越しの想いのように交わる事は無い。

 

 

 

 お互いがこんなにも思っているのに・・・・・、

 

 

 

 

 

 

 

 

後書き

 テンさんの狂想に影響されて恭×なのを書きたくなってしまった。私は恭×桃派なのだが、

 恐るべし、テンさん!

ちびざから「どこがじゃよ!!」

 何処がって、何が?

ちびざから「恭也となのはが結ばれておらんじゃろ!」

 いや、これ明文化してないから分かる人は少ないと思うが、一応ハッピーエンドだぞ。

二人はこれからもずっと傍にいる事を決めてるから。だから二人とも恋人を作らないでずっと傍にいる。

死が二人を分かつその時までな。

ちびざから「じゃとしても普通は想いを告げて結ばれるじゃろうが!? 切な過ぎるぞ!!」

 普通はな。しかし私は悲しくも気高き守護者を書くような作者だぞ? 私に普通を求めるな!!

ちびざから「逆ギレ!?」

 というよりもこの話のコンセプトが普通と違うから。

 最後の一線で論理感と常識によって留まってしまう。

 そんな話を書きたかったから。

ちびざから「お主、感性が狂っておるぞ」

 自覚してる。

一応これはシリアスラブに分類されると思うから切なくなるだけだと思うけど。

ちびざから「いや、それが可笑しいんじゃよ」

 

 こんな駄文を最後まで読んでいただきありがとうございます。

ちびざから「次はマシなのを書かせる故に、見捨てんでくれ」

 ごめん、マシなのはたぶん、ってゆーか確実に無理。

ちびざから「死ね!!」

 ぎっ、ぎにゃあぁあああああああああ!!!





いやいや、これはこれで一つの幸せな結末かと。
美姫 「アンタもちょっと普通じゃないしね〜」
失礼な!
美姫 「冗談よ。確かに、これはこれで幸せなのかもしれないわよ」
このままずっと傍に居続ける事になるんだからな。
美姫 「こういった感じのお話もいいわね」
うんうん。ありがとうございました。



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