おっ、遠くに馬車が見える。あいつらが乗っているのはあれかな? それにしても今頃は慌てふためいているのだろうか?

あぁ、その場にいたかったな。そういう意味では失敗か。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

第四十話 救出作戦

 

 

 

 

 

 

 俺を見つけたみたいだな。馬車のスピードが上がった。

 それにしても速過ぎないか? このスピードじゃ俺の目の前で停止できないぞ?

 さらに止まる気配がない。もしかして、俺はかなりヤバイ事をしたのではないだろうか?

だんだんと嫌な予感というか頭の中でニゲロニゲロニゲロドアヲアケロって何度もリピートしてるんだけど。

 あと少しの位置まで馬車が来た。馬車を操っているのはダリアではなくリリィとベリオだった。

やべぇ……、確実に殺られる!!

 だが、ここで逃げてしまっては芸人魂が廃るというものだ。

ここは!!ぶつかるしかない!!

 

ドンッ

 

グフッ、予想以上の衝撃が俺を襲う。カエデに殴られたとき以上の痛みが俺の身体を襲う。

 だが、それだけではない。その後俺は縦回転して、地面を結構長い間すべる。

痛いよ。

 俺の様子に慌ててあいつらが俺に駆け寄ってくる。

その中でも一番速く着いた大河が俺を抱きかかえた。寒気がするな。

 

「蛍火!! 大丈夫か! 傷は浅いぞ!!」

 

 大河の真剣な表情が全てを物語っている。

大河、よく分かってるじゃねぇか。

 俺はなぜか常備させられている血糊を口から吐き出す。

 

「とっ、当真。私は……、公務員かパチプロになりた……かった」

 

 ガクッと俺は息を引き取るように気絶する振りをする。

 

「どっちやねん!!」

 

 ナイスだ、大河。

 

「おい、蛍火!! 蛍火!!」

 

 再び、大河が俺を揺さぶる。それでこそ、大河だ。

 

「とっ、当真。何故、リリカルなのはStrikerSでなのははバリアジャケットを着るとサイドポニーからツインテールになるのでしょうか?

サイドポニーの方が可愛いのに………」

「蛍火―!!」

「いつまでやってんのよ!!」

 

 スパンッスパンッとリリィからハリセンが飛んできた。

スナップの返し方、角度、どれをとっても申し分ない。こんなところで燻らせて置くには惜しい人材だ。

しいて言うのなら一体どこに持っていたというのだろう? 

すごく疑問に思うが聞いてはいけない。彼女はなんと言っても学園長の義娘なのだから。

 

「折角、緊張感を飛ばしてあげようと思って一芝居売ってあげたというのに」

 

 やれやれと、疲れた様子を出す。

それにリリィ以外の面々は呆れている。折角身体を張ったというのにがんばりがいの無いやつらだ。

 

「さてさて、ではこれから頑張ってくださいね? 生暖かい目で見てますから」

「温かい目で見るんじゃないのか?」

 

 ふっ、腕を上げたな大河。

だが、これ以上ふざけてはいれない。リリィがハリセンを取り出しにかかっているからな。

 

「さて、真面目な話をしましょう。あそことあそことあそこ」

 

 俺は集落がある方向にある無事な建物や無事な木々を指差す。その度にそこから気配がざわつく。

ふっ、二流め。

 

「あそこで私たちを見守っている人がいるのでくれぐれも攻撃しないで下さい」

 

 ん? いや、むしろ不慮の事故で消えてもらったほうが好都合かもしれないな。よし、そうしよう。

 

「いえ、やっぱりモンスターと戦うことになったら全力で周りを気にせず攻撃しちゃってください。

流れ弾に当たるようなら三流どころか四流ですし」

 

 その言葉でさらに気配がざわつく。だからこそ、お前らは三流なんだよ。

 

「あの、蛍火さん。人がいるんじゃ?」

 

 ベリオが優等生の回答をしてくれるが。そんな事、気にしなくていいぞ?

それよりも周りを見たほうがいいぞ?

 

「はいはい、そんな事よりも情報収集が先でしょう? 何のために私がアドバイスしたと思っているんですか?」

 

 俺の言葉にやっとここが敵地であるということを思い出したのか。全員に適度の緊張した。

 

「人の気配が………しない。」

 

だが、リコの呟き通り、人もモンスターも見られなかった。俺が指差したところ以外からはな。

とりあえず、どう行動するか、ということを皆で話そうとした時、(もちろん俺は加わっていない)カエデが声を上げた。

 

「足音がするでござる」

 

当然そんな事は俺も気付いている。だが、それを声にはしない。見張られてるからね。

カエデの言葉に、全員が緊張をみせる。

人か、モンスターか。近づいてくる気配に向かって、カエデが音もなく近づき、背後へと回りながらクナイを喉元に突きつけた。

 

「動くな」

 

 カエデはいつもよりも低く、冷たい声で気配の主に言い放つ。それに短い悲鳴が反応として返ってきた。

「カエデ、大丈夫………人よ」

「む?」

 

 リリィの言うとおり、現れたのは初老の男だった。外見だけは。

 ふむ、原作通り誰も生き残っていないか。それだと楽だな。

 

「ひ、人か?」

「ご安心ください。王室からの依頼で、あなた方の救助に参りました」

「おお、やっと助けが。私はこの村の村長のラウルと申します」

 

その言葉に全員が頷く。確かに、俺が持ってきていた資料に、村長ラウルの名前があった。

興奮した様子をみせる村長に向かって、まず大河が胸を張った。

 

「フローリア学園の、当真大河と従者一行だ」

「誰がですか!」

「アンタの方が私の従者よ!」

「その弟子でござる」

「………マスターの僕です」

「戦うコックです?」

「じゃ、じゃあ私はお兄ちゃんの妹で戦うコックさんの……って、蛍火さんいったい、どんな自己紹介なんですか!

取りあえず私たちはフローリアの救世主クラスの一行なんです」

 

 そんなとても救世主らしくない一同に向かって、ラウルは驚きの声を上げたのだった。当然だろう。

人でなくてもこの紹介は無いだろう。特に俺。

 

「っ!? きゅ、救世主候補様?そ、それは遠い所を本当によく来てくださいました」

 

 それにしてもよく化けている。ダウニーに指導されたのか?

 

「挨拶はそのぐらいで、詳しい状況を教えてもらえないか?」

 

大河の言葉にラウルは頷くと、大河たちを促がして歩き始める。

 

「こちらでございます」

 

 一行は偽ラウルに案内を頼み、村の中を歩き始める。救世主クラスの中で俺以外にもラウルの動きに注意を払っていたものがいる。

それはもちろん大河。村長がモンスターであることには気付いていないようだが(もし気付いていたなら速攻でトレイターでぶった切っているだろう)それでも俺の言葉からこれがモンスターに組しているかもしれないと考えている。いい事だ。

 

「人の気配がまるで感じられぬでござるよ」

「今は、モンスターの襲撃を恐れ、私の家の地下室に隠れております」

「そうですか。ところで誰か怪我を負っている方は? 私、治癒魔法も治療の心得もありますが」

 

 ベリオが心配そうに聞くと、ラウルは首を振った。

 

「無事な者たちに怪我はありません。問題は人質の方でして」

「それで、人質になっている人たちは?」

「モンスターたちが襲ってきたのは、ちょうど昼休みになる直前でしてな。

村の外周に埋めた柵を破って進入してきたかと思うと、まず村役場を襲ったのです」

 

「………役場」

 

 ラウルの話を聞いて、リコはポツリと言った。

 

「な、何か不審な点でも?」

 

 そんな彼女に、ラウルが慌てたように問う。

 

「………何者かの意志が介入している可能性が、高い」

「そうよね。モンスターが、人がもっとも多い所を選んで狙うなんて聞いたことないわ」

 

 リリィも、リコの言葉に頷きながら言う。さらにラウルも頷いてみせた。

 

「ええ、ですから大量に村人が殺されてしまいました」

「殺さ………うぐ」

 

 血が舞い散る所でも想像したのか、カエデが真っ青になる。

だが、その程度で済んでいるという事はちゃんと血液恐怖症が治ってきている証拠だろう。

カエデの反応の意味がわからないのか、ラウルは少し不思議そうな顔をみせながらも続きを説明する。

 

「そして、生き残った数人の女性たちを人質として役場に立てこもってしまったのです」

「人質は全員女性なんですか?」

「はい。しかしそれも時間が経ってしまった今となっては何人生き残っているか」

 

 

 

 

 

 

 

 しばらく歩くと、この村にしては大きめな建物に辿り着き、足を止める。

 

「あれが役場です」

「相変わらず、人もモンスターも見かけないでござるが」

「ええ、モンスターと人質は、全てあの建物の中です」

 

それを聞いて、ベリオが振り返って、他の者たち問いかける。

 

「それで、どうやって侵入しましょう?」

「ここは拙者が」

「やめとけ」

「し、師匠、なぜでござるか? 隠密ならば拙者が………」

 

 カエデは驚いたように聞き返すと、大河は肩を竦める。

 

「ここでたくさんの人間が死んだ。どういう意味かわかるだろ?」

「あ」

 

  カエデも努力してはいるがそれでもまだ、克服したわけではない。

その上、中がどうなっているのかはわからないのだ。そんなカエデを侵入させるわけにはいかないな。

 

「実はそろそろ食事の差し入れの時間でして」

「人質用のですか?」

「ええ」

 

 その運び役になりすませば、中に入ることが可能ということになる。いい入り方が見つかった、とばかりに、一同が顔を見合わせる。

ただ大河だけは、それをある種不安に思っている。この先に待ち受けているのがまったく分からないから。

 

「ですが、いくつか制限が設けられていまして」

「制限?」

「まず、必ず私を含めて二人以内であること。もう一つは武器を持たないこと、です」

 

 この時点で俺は入れない。俺が装備全てをはずすとなると最低五分はかかる。というか無理だ。

この服自体が武器にもなるからな。当然。アンダーウェアも靴も、

 まぁ、それ以前に俺は直接手を出せないのだが。

 

「モンスターのくせに本当に知恵が働くわね」

 

 忌々しそうにリリィが呟く。それにラウルも頷いて返す。

 

「ですので、私と来て下さる方は武器を外して頂きます」

「では私が」

「待ちなさい、ベリオ。私が行くわ」

「でもリリィ、衰弱していた場合は私のほうが」

「そうだけど、でも戦闘になるかもしれないわよ?」

「それは」

 

 ベリオも分かっている。彼女は戦闘では基本的に補助が役割だ。単体で戦闘には向いていない。

 

「私で問題ないわね?」

「そうことなら、わかりました」

 

 ベリオが頷いてみせると、リリィはラウルの方へと向いた。

 

「あなたは武器を持っていないので?」

「私の専攻は魔術ですから、一応武器といえば、このライテウスになるんでしょうけど」

「ほほう、それが召喚器というものですかな?」

 

 偽村長の目が輝く。それは切り札にして最高の武器。抑えることが出来るのなら抑えたいよな。

 

「ご存じでしたか」

「それならば武器に見えませんな」

 

 確かにライテウスならば、武器に見えず持っていくことは可能だ。しかし、そこで大河が口を開いた。

 

「待てよリリィ、ここは俺の出番だ!」

「はあ? 何言ってんのよ、私が行った方が一番いいじゃない」

 

 攻撃魔法も回復魔法も使え、召喚器も持っていくことができる。ならば、リリィが行くのが一番いいのは言うまでもなかった。

 覚悟をしているかどうかは別として。

 

「いかさまマジシャンに見せ場取られてたまっか! 従者は救世主の俺様に任せとけばいいんだよ!」

「んなっ!! アンタじゃ武器だって持っていけないのよ! 蛍火じゃあるまいし、召喚器なしでどうするつもりよ! 

召喚器に頼っているあんたじゃムリよ!!」

 

 二人は言い争いを始めてしまう。他の者たちがそれを止めようとするが、止まらない。

大河のあの目あれは覚悟を決めている。人を切り捨てる覚悟を。観護はきっとそんな決意を持つことを反対するだろう。

だが、俺はそれを尊重したい。護る者のために切り捨てる覚悟をした大河を。

 

「いえ、ここは当真に任せましょう」

「なんでよ!!」

 

 リリィが噛み付く。彼女の言い分は最もだ。だが、それでも俺は大河に行かせたい。

 

「そうですね。強いて言うなら、当真の方が冷静に見ているからですかね」

 

 その言葉の意味は分からないだろう。だが、それでも大河の雰囲気が違うことには気付いている。

 

「いってきなさい。当真」

「おう!! 未亜、預かっといてくれ、それと悪ぃな」

 

 未亜に対しての謝罪。もう、大河を止める事はできず。他の者たちは見送るしかなかった。

 

「で、ですが、よろしいのですか? その………」

 

偽村長が滅茶苦茶不振そうな眼で大河を見ている。多数決でもなんでもなく俺が決めたからな。無理も無いか。

 

「うん? 武器は外したが、何か問題があんのか?」

「いえ、私の方はないんですが……」

 

そう言いながらラウルは大河の後ろへと視線を転じる。俺は大河に対して頷き、やってこいと目で語った。

大河もそれに決意ある表情で頷き返すとラウルを急かすように促がす。

 

「良いから、早く行こうぜ。もう決まったんだから問題ない」

「は、はぁ」

 

大河に促され、ラウルはしぶしぶと歩き始めた。

中に入るのは俺たちの中で一人といっていたが監視してはいけないとは言われていないので除き見ようか。

 

「蛍火さん。どうして大河君を行かせたんですか?」

「いったでしょう。当真が一番冷静だった。そして、覚悟を決めていた」

 

 それだけだ。

ん? 何だ、この気配は? まさか…………

 

 

 

 

 

 

 

 

役場の中に入った大河は、まず完全に締め切られた窓の方に向かった。

 

「塞がれているのか」

「ええ」

 

 窓は全て内側から木の板で塞がれていて、中に光が入らず真っ暗であった。

 大河はその板をコンコンと叩いたあと、偽村長について再び歩き出し、人質がいるという一番奥の部屋に向かう。

偽村長に先に入るように促され、大河は部屋の中へと入った。中に入ると、血の匂いが充満していた。

だが大河は顔色を変えずに、辺りを見渡したが、人質の姿はない。あったのは人であったもの。

無惨に引き裂かれた初老の男だった。その顔は……。

 

「ほほう、驚かれないので?」

 

 背後から声が聞こえたが、大河は無視して部屋の中央にまで移動する。それから、ようやく振り返った。

 

「いや、十分驚いてるさ。でもな。まだ、予想の範疇だったってだけだ。最悪に比べればまだマシだ」

 

 その言葉に訝しげな偽村長は訝しげな顔をする。この状況のどこが最悪でないのだろう。人質は殺されている。

だが、大河にとっての最悪とは目の前のものが人であること。

 

「お前が人間じゃない。それだけで、俺はこの手で人間を殺さなくて済むってことがわかったんだからな。

なら、遠慮なくお前をぶっ飛ばせる」

 

 にやりと相変わらず意地が悪そうに笑う。その大河にもう、人の姿をとる必要のなくした偽村長は姿をまさに異形に変じていった。

 

「仲間ト分断サレ、召喚器ノナイ救世主ナド、タダノ人間ト同ジダ!」

「だとよ、トレイター」

 

 大河の左手に光が集まり無骨な剣の形を形成した。それは間違いなく、召喚器トレイター。

大河の右手に収まったトレイターの姿を確認した瞬間、バケモノは驚愕の声を上げた。

仮に顔に表情を作り出す機能が備わっていたのなら、間違いなくバケモノは驚愕の表情を浮かべていた事だろう。

 

「マジで残念だったな。教科書で習わなかったのか? 召喚器ってのには2種類あってな」

 

そう言いながら、大河はトレイターを大きく振りかぶる。明らかに投擲の体勢。

 

「天才である俺様のトレイターは、呼び出せばすぐに出てくるタイプなんだよ!!」

 

そう叫び、大河はトレイターを思いっきりバケモノに向かって投げた。トレイターの切っ先が、触手の根元に突き刺さる。

 

「あrじゃh歩じrばpじdp!?」

「あれ?」

 

 大河は不思議がっている。もしものために大河は未亜に念話をして攻撃できるようにしていた。

だが、何時までたっても攻撃がこない。

当然だ。俺が止めたのだから。

 

「師匠!!」

「おい、カエデいったい?」

「今はいいでござる!!」

 

 カエデが乗り込み大河を連れ去る。少々強引だがこっちのほうがいいだろう。それにカエデの強制的な治療にもなっただろうし。

 大河がカエデに担がれて外に出てきた。

 

「おい!! どういうことだよ!!」

 

 大河の中で決めていた作戦と大きく外れた事に大河は憤慨している。他のものを詰め寄ろうとするが。

 

「あの建物地下には人質がいます」

 

 気配があまりにも微弱すぎて俺も気付かなかった。

地下まで気配を探るとなると風の上位属性の大気か、地の上位属性の大地。そして五行の上位属性の闇を使えないと探れない。

大気か大地は神を顕現させれば楽に出来るがその度に死にかけていたのでは意味が無い。

 

「来るぞ」

 

ポツリと俺が呟くのに反応したかのように、瓦礫の中から獣が姿を現す。すでに、人間としての原型など一欠けらも留めていない。

亀にも似た姿。亀としての特徴的な顔。その背に覆われた甲羅。それは、確かに亀に近い形状をしていた。

ただ、2本足で立つこと、両肩より伸びた幾本もの触手、

そしてその3、4m近くある巨体。そう言った部分を見えると、確かに目の前の敵は獣ではなくモンスターでありバケモノだった。

 

「当真」

「あぁ、間違いねぇ。あれはカメッ○スだ!!」

 

 やはり考える事は同じか。

 あれは間違いなくカメッ○スだ!!

 

 俺と大河の二人の言葉にカエデや、ベリオ、リリィは?を浮かべていた。

 まぁ、知らないだろうな。

 

「確かに・・・」

「そうかもしれないけど、蛍火さんもお兄ちゃんもリコさんも緊張感がないよ」

 

 リコが頷く中、未亜の突っ込み。まぁ、そうかもしれないな。

 

「あんたら、バカなこと言ってないで来るわよ!!」

 

リリィが言うと、カメッ○スが雄たけびを上げながら触手を振り下ろす。

触手は、一瞬にして伸び射程距離を伸ばした。その射程距離内に、救世主候補達が入っている。

 

「避けろ!」

 

咄嗟に、振り下ろされた触手を避ける。地面に叩きつけられた事によって土煙が発生した。

だが、誰も構わない。構っている時間などない。

 

「行くぜ、カエデ!」

「了解でござる!」

 

大河、カエデ、の2人がそれぞれ別方向からカメッ○スに突進する。配置は大河が右、カエデが左という配置だ。

もちろん俺は観戦中。

 

「ジャスティ、お願い!!」

「援護します」

「塵となりなさい」

「後ろは任せてください!」

 

未亜の弓矢とリコの魔法、リリィ、ベリオによる援護も忘れてはならない。数多の矢数多の魔法による援護。

ガメッ○スは完全に足止めされている。少ししつこいか。でもあれをバケモノ扱いするには本物のバケモノに失礼なんだよな。

なら亀でいいか。

両手の触手で矢や魔法を打ち払うが、それだけだ。その場に完全に釘付けとなった亀に、

 

「おらあぁあああ!!」

 

 大河が唐竹の斬撃を亀の触手目掛けて繰り出す。その速さに触手を引くことも叶わず、

 

「■■■■■■!!!?」

 

亀が悲鳴を上げる。それは人の声帯では発することの出来ない、ひどく耳障りな悲鳴。まぁ、俺はなれているが。

 

「滅でござる!」

 

 亀が触手を切られて怯んでいる隙にカエデは亀の懐まで潜り込み、破衝拳を放つ。それにより触手がさらに数本斬り落とされた。

斬り飛ばされた腕から大量の血と思われる緑色の液体を撒き散らし、更に亀は悲鳴の咆哮を上げる。

だが、まだ幾分か残っていた触手を亀は大河とカエデに向かって振り下ろした。

それらをサイドステップを利用して余裕を持って回避する大河とカエデ。

 

「前ばっかり気にしてると足元すくわれるわよ!!」

 

 大河とカエデの回避に合わせてリリィがボルテクスを放ち、亀は硬直する。

そこに追撃をかけるように未亜の矢が亀の両眼に突き刺さる。

 

「■■■■■■!!」

 

悲鳴をあげ、だがそれでも攻撃する意思を止めない亀。

 

「■■■■■■■■!!!」

 

亀が口を大きく開き、緑色の血と唾液を巻き取らしながら、大きく触手を振りかぶる。

 

「やらせるかよ!!」

 

 一度距離を取っていたはずの大河が再び亀の懐に潜り込み下から振り上げるように斧の形状をしたトレイターを振るう。

 また、数本の触手が飛んだ。そして、大河は斧の自重を使いさらに振り下ろす。残る触手は数本にまで減った。

 

「■■■!!!」

 

更に悲鳴を上げる亀。眼も見えず、攻撃の要たる触手も斬り落とされた亀は後退する。

 

「下がらせません!!」

 

 だが、亀の後退もベリオのホーリーウォールにより遮られる。動きが止まった亀にリコが追撃をかける。

 

「隕石、いって」

 

 隕石が亀の身体にぶち当たり、強固な甲羅に傷をつける。そこを見逃すはずも無く、未亜が力を込め、矢を放つ。

 

「貫け!!」

 

 未亜の言葉どおりにジャスティから放った矢は亀の甲羅の亀裂部分を貫く。だが、それでもまだ、亀は死なない。

一撃、一撃が即死クラスなのに未だ生きている。驚愕すべき生命力だ。

 

「くそっ、どんだけ頑丈なんだよ」

「ですが、確実に利いています。このまま攻撃し続ければ」

「そんな事言われなくても分かってるわよ!!」

 

 リリィが亀裂部分にブレイズノンでさらに追撃をかける。

 

「■■■■■――――!!??」

 

歪な悲鳴と、肉が焦げるような嫌な臭いが当たりに充満し始める。

それは血が沸騰する臭いだったり、肉が焼き焦げるような臭いだったり、全身の神経が焦げる臭いだったり。

とにかく、凄まじいまでの嫌な臭いだ。あいつらには辛いだろう。

 

ん? この臭いは別のものが混じっている?

蒸発した血液に混じって、いや、血液自体に毒があるのか。その毒が当たり一体に飛び交っている。

なるほど、こうやって毒を大河達に盛らせるのか。

考えたな、ロベリア。

 

「カエデ、終わりにすんぞ!!牽制頼むな!!」

 

 その言葉とともに大河とカエデは駆け出す。後衛組みは亀を動かさないように絶え間なく攻撃を続ける。

 大河は亀の有効射程の少し前でカエデをトレイターの上に乗せ上に向けて振り上げる。

 

「必死に練習した師匠との合体技喰らうといいでござる!! 雷神!!」

 

 亀の上空から真下に向け雷神を放つ。だが、その落下地点は亀の少し手前。このままでは当たらない。

 だが、その場所にトレイターを振り上げた大河が入る。

そして、カエデの雷神が振り上げたトレイターにぶつかり、莫大な下への力を生み出す。

 

「「雷神剣!!」」

 

 雷を纏ったトレイターが振り下ろされる。結果は眼に見えている。亀は一刀両断されていた。ところどころ肉を焦がしながら、

 それにしても大河、魔法剣に憧れていたんだな。カエデと合体技を作るまでに、

この調子だと紅蓮剣もありそうだな。参考はテイルズ・オブ・○ィスティニー?

 そして、亀は死んだことによりその胴体を支えきれず倒れる。

 

「………終わったでござるか」

 

骸を覗き込みながら呟くカエデ。だが、心なしか息が荒い。そしてそれを見ていた大河も大河は何度も深い呼吸を繰り返していた。

見てみれば、未亜たちも同じ状態のようだ。皆一様に顔を青くし深い呼吸を繰り返している。

おかしいと思ったのだろう、大河は皆の元へと合流しようとした。

だがそれは叶わなかった。足を踏み出した瞬間、膝が折れて地面に肩膝を付いていた。

 

 

 

 


後書き

 さて、大河たちと亀の戦い。

 幾ら大きくても所詮は雑魚キャラ。原作以上に訓練をつんだ救世主候補の相手は務まらないです。

 しかし、務まらなくてもそれでも役目はあります。

 あの亀の役割は救世主候補に毒を盛らせる事ですから。

 

 

 

 漸く始まった救出作戦。

観護(ある程度は同じだけどまだ生きている人が居るのね)

 あぁ、一日早くなったお陰で生きながらえている人が居る。不幸な事にね。

??「不幸なの?」

 受け取り方しだいだよ。生きる事が必ずしも幸せな事じゃないからね。

観護(大河は本当に蛍火君を見習ってるのね。カエデとの合作の魔法剣を作り出すなんて)

 まぁ、魔法剣は普通に攻撃するよりも威力が高いからね。今、大河とカエデにタッグを組ませたらそれはもう凄い事になる。

??「かもしれない」

 そういえば、観護は蛍火の判断に反対しないの?

観護(大河が人を殺す決意をしたことね)

 そう、

観護(して欲しくはないわ。でもそうでもないと大河たちが生き残れない事は分かってる)

 ふーん、てっきり完全に反対するかと思ったけど。

??「ねぇ、ところで私の出番はまだ?」←こめかみに青筋

 ちょっ、待て。誰もこの話で出るなんていってないだろ!! 今回の投稿で出てくる可能性があるって言っただけだよ!!

??「問答無用。お仕置き」

??&観護「(碧月・鎌鼬!!)」

 今度は魔法剣!!?

観護(という訳で次回予告)

??「生存している者はどうなるのか?」

 では、次の話でお会いいたしましょう。 





うーん、魔法剣が思った以上に体力を消耗するのかと思ったけれど。
美姫 「練習してたんなら、そのあたりはちゃんと考えてるだろうしね」
一体、何故行き成り変調を起こしたのか。
美姫 「それに生き残っている人は?」
気になる次回はすぐ後!



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