「おい、いい加減、疲れてきたんだが」

 

ポツリと大河は呟いた。確かに大河たちの動きは最初に比べて精彩はない。すでに、大河たちは守護者を六度ほど倒した

だと言うのに、まるで疲れ知らずのように守護者は再生を繰り返しているのだ。

 

「お二人とも大丈夫ですか?」

「疲れてるけど、大丈夫。」

「大丈夫だが、さすがに疲れた」

 

二人がほぼ同じような答えを出す。大河は連戦に告ぐ連戦、未亜は地上に戻ってから最下層までほぼ全力でダッシュ。

疲れていないはずがない。

二人の安否を聞くリコも相当の疲労が溜まっている。表情には出ていないがそれでも厳しいことには変わりない。

 

 

 

 

 

 

 

第二十八話 新たなる契約

 

 

 

 

 

 

 

守護者のドラゴンの頭が火を噴きながら襲い掛かってくる。これまでの間に幾度その炎に行く手を阻まれたことか。

大河がドラゴンの炎を避けながら前に進む。大河の後ろから、その炎を切り裂くように一条の矢が守護者目掛けて突き進む。

自らの炎が視界を遮り、守護者は矢の接近に気付けず、その羊、ドラゴン、ライオンの片目に突き刺さる。

守護者の上空にはリコが待機していた。リコはネクロノミコンのページを数枚、守護者に向かって投げる。

ページが守護者にまとわり付く。ページに刻まれた術式が起動しハルダマーによって守護者その場に貼り付けにされる。

 

「もう十分暑さは堪能したんだよ!!」

 

大河はトレイターを斧の形状に変化させ、ドラゴンの頭目掛けて唐竹の斬撃を繰り出す。

首の根元から引きちぎられるようにドラゴンの首が飛ばされる。

 

「未亜!! 何でも良いからこいつを足止めしてくれ!! リコ、その隙にでっかいの頼むぜ!!」

 

 二人はそれを首で頷くだけで返し、与えられた役目を果すために動き出す。

大河はそう言いはなった後、未亜がいる方向に守護者から距離を取った。

 守護者は未だにハルダマーによって足止めされている。大河の動きを止めることはかなわない。

 未亜も足止めするために守護者のほうに突き進む。

大河と交錯する前に腰を落としてジャンプして大河の肩を踏み台にするようにさらに上空に跳ぶ。

 そのまま弓を下に向け五本の矢を真下にいる守護者目掛けて放つ。重力の力も手伝い落下していく矢には雷が纏わっていた。

 

ガァアアアアア!!!

 

未だにハルダマーの力場から逃れることが出来ていないはずなのに羊の頭がその矢を迎撃しようと動く。羊に光球が集まっていく。だが、それが発射されるよりも早く矢が突き刺さる。

上空の何処からともなく矢目掛けて雷が降り注ぐ。

 

ゴギャァァォォォォ!!

 

全身の痺れによって、守護者の動きが完全に止まった。そのチャンスを歴戦の猛者のリコが見逃すはずもなく。

 

影よ、大地を覆い尽くせ

 

瞬間、リコの後方頭上に巨大な焔の色をした魔法陣が浮かび上がった。その魔法陣には、凄まじい魔力が溢れている。

 

テトラグラビトン!!

 

巨大な隕石が魔法陣より放たれた。

 

 

 

 

 

 

 

荒い息が響き渡る。先ほどのテトラグラビトンには、リコのかなりの魔力を消費していた。

これ以上の戦闘は、はっきり言うとリコには無謀である。もちろん大河と未亜にとっても。

 

「やった、か?」

 

大河が呆然とした感じで呟く。後には、ピクリとも動かない肉の塊のみが残っていた。

 

「はぁ、ったくマジで疲れたぜ」

「そうだね」

 

大河の呟きに未亜も同意する。未亜の方は想像以上に体力を消費している。

朝のトレーニングをしているとはいえ、まだ少ししかたっていない。

それに女は男とは筋肉のつき方が違うのでそれは仕方の無いことかもしれない。

 

「?」

 

 リコが自分が行った結果を未だに納得できないとばかりに首をかしげている。

当たり前だ。あれはルビナスと学園長の合作。そう簡単にやられるはずがない。

 

「ベリオのいない時に回復の重要性を知るなんてな」

 

 大河の両手両足の末端が若干だが痙攣している。全身の筋肉の酷使のため、痙攣を起こしているのだ。

これ以上、無理をさせると筋断裂が起こってしまうかも知れない。

 大河の言う通り確かにいない時に限ってその今まであった物の重要性を気付くからな。

 

「本当だね。蛍火さん何処にいるんだろ? 蛍火さんがいれば回復魔法かけてくれるのに」

「あぁ、確かに。あいつの腕はベリオには劣るだろうけどそれなりにいいしな」

 

 二人が微かな期待を寄せてそう口にする。

いや、確かに聞こえてるんだけどね。出るつもりはないよ。

いない奴のことを言ってもどうしようもないだろうに。

 

「大河さん、未亜さん。これが最後通告です。ここで地上に帰ってもらえませんか?」

 

 唐突なリコの言葉に未亜は驚き、大河は深いため息を吐いた。少しは予想していたらしい。

 

「さっきも言ったように俺達と一緒に帰ってくれるのなら俺はかまわない。けどリコはまだいるつもりなんだろ?」

 

 大河の確認というよりも断定の言葉にリコは口を開くことが出来なかった。沈黙は肯定と同じ。

リコは口に出さないまでも態度で立派に示していた。

 

「だとしたら俺は帰れない。俺が上に帰るのはリコの用事が終わった時だ」

 

 大河は確実といって良いほどに自ら口に出した事を撤回しない。そして最後まで突き通す。

自らが決めたことを不安や不信を抱かない。

 だからだろう。大河の周りに人が集まるのは、そして誰もが大河に魅力を感じるのは。

 俺とは正反対だ。俺は悩みに悩んで行動の最中でさえも最善かどうかを悩む。

俺に人々が付いてきてくれるのは結果が出ているからだろう。

 だが、大河はその行動が、振る舞いが人々についていこうという気にさせる。

きっとそういう部分があったからこそトレイターに選ばれたのだろう。

 だからこそ、この運命と宿命と業に縛られた醜い世界を変えることが出来るのだろう。

 

(蛍火君。嫌な予感がする)

 

 突如、観護が俺に話しかけてきた。さっきまで一度も話してこなかったというのに、

 

(これから大河たちがもう一度戦い未亜が犯されかけるからな。きっといやな予感はそれだろう)

(ううん。違う。それじゃない。もっと別の……)

 

 観護が言っていることは的を得ていない。それでも伝えたいのだろう。かくいう俺も不安がある。

戦っている最中に守護者は気付きにくいぐらいにゆっくりと力を増していた。

それに大河の成長具合と原作の守護者の力を考えれば明らかに守護者が強くなりすぎている。何かが介入している可能性がある。

それがここで最悪の形で出るかもしれない。

 

(それでも今は様子見だ。介入は出来ん)

(うん)

 

 観護が静かになる。さて、どうなることか。

 

 

 

 

 

「何も言わねぇんだな、リコ」

「言っても、無駄でしょうから」

「お、わかってんじゃねぇか」

 

ケラケラと笑う大河。それを眩しそうにリコは見ていた。今かなり精神的に変化が起きたな。

ふむ、そろそろドラゴンの頭が体を再生する頃だな。

 

「あっ! 大河さん!! 守護者は自らの体が分割された場合、任意のパーツに生命を動かせるんです!!」

「なっ、ってことは」

 

不思議そうな顔をする大河。疲労と、達成感によって緩んでいた精神が一気に引き締まる。

 

「守護者はまだ死んでいません!!」

 

リコの叫びに反応したかのように、唐突に衝撃が大河に襲い掛かった。

 

「なっ!? トレイタ……」

 

全てを叫ぶよりも、再生を果たした守護者は大河に突進し、一気に突き飛ばした。

 

「がはっ!」

 

口から血を吐きながら、大河は吹き飛んだ。二転、三転、と床を転がる大河。立ち上がろうとするに足に力が入っていない。

 

「た、大河さん!」

 

そんな大河の姿を見て、あわてて大河の傍に駆け寄ろうとするリコ。だが、そんなリコを大河は床に倒れこんだまま制した。

 

「お、俺のことはいい! 未亜を!」

「ですが!」

「いいから未亜を助けるんだ!」

 

大声で叫ぶ大河に、リコは苦い顔をして従った。リコとしては、今すぐにでも大河を助けたい。

だが、大河は未亜の助けを望んでいる。

 

「未亜さん、今すぐに……!」

 

急いで未亜の傍に急ごうとするリコに立ちふさがる影があった。それは、守護者。

その巨体をうまく生かし、一気にリコに体当たり。

 

「あぐっ!」

 

まともに喰らい、大河のように床を転がるリコ。疲労も重なってリコは気絶してしまった。

どういうことだ? ここでリコは気絶しなかったはずだ。

 

「やらせない!」

 

未亜がジャスティを召喚し、矢の矛先を守護者へと向ける。

 

「!! 未亜、よせ!!」

 

大河は叫んだ。叫ばずにはいられない。何しろ、未亜の体はすでに限界だ。だが、それでも未亜は戦うことを決意した。

大切な者たちを奪われない為に。その結果が、すでに見えているとしても。

未亜もカエデと同じか。

 

「この!!」

 

未亜が矢を連射で3本放つ。それを守護者は真正面から受け止めた。

 

「えっ!?」

 

驚く未亜。別に不思議なことはない。何しろ、体力低下、筋力の限界による力の低下。

いくら召喚器であろうとも担い手に力がないのであれば役に立たない。

 

「未亜、逃げろ!」

 

何とか肩を立ち上げる大河。だが、未だに膝がブルブル震えている。立つことは出来ないだろう。

 

ガァァァァァァァ!!

 

守護者が手を振り上げる。未亜の目の前に迫る守護者の爪が迫り来る。未亜は硬直してしまっている。

 

(蛍火君!!)

 

またしても観護が声を荒げる。しかし、俺は動けない。

 

(まだだ)

 

それだけを観護に伝え、観護を制する。

守護者の爪が振り下ろされる。

 

「きゃああぁあああ。」

 

 未亜が悲鳴を上げる。しかし、いつまでたっても未亜に痛みは届かない。

 未亜が目を開けると大河が守護者の爪をトレイターで防いでいた。

本来動けるはずが無い。しかし、この時だけは大河の精神は肉体を凌駕した。

 守りたいがゆえに、失わせないために。それは未亜と同じ。

 だが、疲弊しきったその身体ではいつまでも持つものではない。案の定、大河は守護者の尾によってまたも吹き飛ばされる。

 そして先程と同じように床を転がる。違う点は大河に意識が無いこと。

 

何故だ? 何故こうまで違う。

 未亜が半狂乱になって矢を放ち続ける。だが、それは守護者に意味を成さない。

守護者は豆鉄砲が当たった程度にしか感じていないように歩む。

そしてついに守護者に捕まりその身体を持ち上げられる。

 

これで白の主に覚醒。だが、どういうことだ? 何故不安になる。

 俺の本能が告げている。未亜は唯このまま守護者の慰み者になり息途絶えると

 

(蛍火君!!お願い!未亜を、未亜を!!助けて!!!)

 

 どうする?未亜を助ければ大河に神を封印させるという確定を失う。しかし、未亜を失うこともまた同義。

 

(速く!!!)

 

 観護がせかす。

どうする? 観護との契約は神を封印することだがその前に救世主クラスと召喚器の守護が任されている。

俺はどちらを取る?

 

(観護。不確定な未来でも未亜を助けるか。確実な未来のために未亜を切り捨てる。どちらを選ぶ?)

 

 俺では判断できない。俺は契約を実行するだけで契約主ではない。ゆえに観護に判断を委ねる。

 

(そんなもん決まってんでしょ!!未亜を助けることよ!!!)

 

 決まった。では戦うとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

Others view

 蛍火は無言のまま、無音のまま駆け出す。そこには一切の音も気配も感じられない。

そして蛍火が駆け出したことに未亜は当然。守護者も気付かない。

本来、臭いにも敏感な守護者が気付かないのは気配遮断の魔術によって蛍火は臭いまで消しているからだ。

そして、蛍火は背後から襲い掛かる。ここで大河たちのように声を上げるなどしない。

彼は暗殺者。音も、気配も、殺気すら殺して一太刀で殺す者。

以前、大河とリリィと戦ったときのように姿を現すこともない。

何故なら後ろから一刀の元、知られること無く殺すのが彼の本来の戦い方。

そして繰り出す。禁じられていた伎を、

 

紅月・禁伎・白閃!!

 

蛍火の魔術はこの世界の魔法の概念とは異なる。この世界は四大元素を元に構築される。

しかし、彼が使うは派生と相剋によってより複雑なより高威力を求めることの出来る五行。

使う魔法の色と夜の象徴である月を頭に置き、その後が伎名となる。

これから繰り出す魔法剣は炎の禁伎、その炎はすでに赤くなく、白い。温度はすでに十万度を軽く超える。

そんなものを持つ蛍火の右腕は当然の如く火傷が出来ていく。いや、それでもむしろ軽いくらいだ。

本来なら人の身体など一瞬で蒸発している温度だ。

召喚器の加護と魔力で身体をコーティングしているからこそ、その程度の軽症で済んでいる。

そして、居合い抜きによる一閃。その一撃はまさに閃光。守護者は蛍火に気付かぬまま焼け死ぬ。

 

 

 

 

 

 

はずだった。

 

そう、そのはずだった。だというのに、守護者は顕在していた。

手ごたえはあった。確実に斬り裂いた。しかし、守護者は先程とは比べ物にならないくらいの速度で再生していく。

その事実に蛍火の表情が驚愕に染まる。どんな戦況であろうと表情を崩したことの無い蛍火の表情が崩れる。

有り得ないのだ。本来この世界に存在する原子でこの一撃を喰らって無事で済むなど有り得ない。

現に余波を喰らった未亜の腕は爛れている。

それを見た蛍火はまぁ、ベリオに治してもらえば後も残らないだろうと考えていた。何気に酷い。

そして、その一撃によって蛍火の存在が守護者に気付かれる。

守護者が攻撃に移るよりも早く蛍火は未亜を吊り上げている守護者の尾を斬り捨て、未亜を救出する。

蛍火の突然の出現に未亜は戸惑いを隠せない。

 

「あの、蛍火さん。あうっ」

 

 観護の柄で未亜の腹に当身をする。その一撃で未亜は昏倒する。

そして大河のほうへ放る。もちろん大河がクッションになるように。

 

(こぉら!!何やってんのよ!!)

(邪魔になるだけだ)

 

 それだけで観護を切り捨て守護者と対峙する。その威圧感は遠目で見ていたときよりも数段上だ。

いや、明らかに数段上がっている。

 魔力弓を取り出し、三本の矢を五度、都合十五本の矢を放つ。大河たちに向けて。

 矢が大河たちに当たることなくその周りに突き刺さる。

 

五芒を描け、五行を抱け、その内にあるものを守りぬけ、簡易・隔絶の結界

 

 矢一本一本に別々の属性を纏わせていたのか矢が赤、青、白、黒、金の炎を上げ、五芒星を描く。そして結界が完成する。

 しかし、これはあくまでも簡易結界なので守護者の猛攻を一分も耐え切れるかどうかも怪しい簡素なものだ。

それでも無いよりはマシだ。

 蛍火は距離を取ったまま守護者を観察する。全体に力が上がっている。速度が上がっていないのがせめてもの救いだ。

しかし、その再生力それだけはどうしようもない。

 普段なら確実に退く。しかし、今は退くことはできない。耐えがたい程のジレンマ。

 蛍火は布を取り出し、観護と自分の手を結びつける。さっきの一撃で握力がほぼ無くなってしまった。

それでも足掻く、契約を履行するために、

 

 

 懐から飛針を取り出し、守護者に向け放つ。狙うは目、どんなに強固の殻を持っていても目だけは守ることは出来ない。

 

グガァァァァ!!

 

 全て目に突き刺さる。先程未亜が放った時と同じ状況だが、違う点が一つ。それは蛍火が投げた飛針が抜ける気配が無いのだ。

 それはもしも守護者と戦う事になった時のために用意していた一品。飛針全体に釣り針のようにかえしがついている。

そのお陰で簡単に抜けることは無い。ちなみに値段は一本で通常の飛針が一ダース買える代物だ。

 これで守護者の目は頭を切り落とさない限り見えることは無い。

 

(封印するほか無いか)

 

 そして、もう一度禁技を発動させる。最初と同じように気配を殺し、守護者に駆け寄る。

 

蒼月・禁伎・零閃

 

 刀に纏うは絶対零度に等しい氷。当然、蛍火の右腕は損傷していく。このまま放置すれば確実に使い物にならないような損傷が。

 だが、その損傷に蛍火は顔を崩さない。戦闘の最中に傷みで顔を崩すような作られ方はしていない。

 守護者にその斬戟は命中した。だが、今度は押し切ることが出来ない。

その事に蛍火は驚いている表情をしなかった。むしろそれこそが思い描いた通りという表情をしている。

そう、今回の目論みは殺すことではない。

 

展開・氷牢

 

 絶対零度の氷を使って相手を氷付けにする。それが今回の目的。観護からその絶対零度に近い氷が守護者を侵食していく。

 観護が触れている部分から徐々に、徐々に守護者を侵食していく。

それに抗うことが出来ないのか守護者は声を上げることも出来ずにいた。

 そして守護者の氷像が出来上がった。

 終わった。しかしその事に安堵する蛍火ではない。

先程は一瞬で消し炭になるはずの一撃を喰らってもなお、生きていたのだ。安心は出来ない。

 

(蛍火君。お疲れ様)

 

 観護が終わったと告げる。しかし、蛍火は戦闘体勢を崩さない。不吉な予感がするのだ。そう、とてつもない嫌な予感。

 

 

 

 

 

 

 

 

ピシッ

 

 何か音がした。それを気のせいだと思っても不思議はないだろう。

だが、何故だろうか? 蛍火の胸には不吉な予感が先ほどの音でさらに強くなった。

 

 

 

 

 

ピシッ

 

 さらに音がする。もはやそれは気のせいではない。幻聴でもない。

 

ピシピシピシピシッ

 

 不吉としか言いようのない音が連続で響く。それと共に不吉な予感は確実なものになっていく。

そしてついに

 

パリーン

 

 封印が破られた。もはや、ここまできては蛍火ではどうすることも出来ない。しかし、彼が構えをとくことは無い。

 

(嘘!!)

 

 観護の言葉に頷きたい。しかし、そうさせてくれる程敵は甘くない。

 氷の封印から抜け出した守護者は歩を進める。一歩一歩確実に、

そして龍の頭が動き、炎のブレスをところかまわず吐き出す。それは蛍火には届かない。だが、その先にはリコが横たわっている。

 急いで駆けつけ炎の反属性である魔法剣を振るう。

 

蒼月・剣壁

 

 氷を纏った刀を手首のスナップを利かせて回す。刀がまるで壁のように攻撃を遮る。その伎によって、炎は消し止められた。

 リコへの攻撃が失敗したと分かった守護者は未亜の方に向かって歩き出す。三人は気絶しているだけなので臭いが消せていない。

目が見えずとも臭いで獲物の場所を認識している。

 そして、未亜を守りために走り出す。

 

 

 

 

 

 それからはそれと同じ繰り返し。

守護者は攻撃が失敗に終わると次の獲物のほうへ足を向ける。そして蛍火はそれに追いつき迎撃する。

 守護者は明らかに蛍火の疲弊を待っている。その事は蛍火も分かっている。しかし、それでも同じように行動しなければならない。

 

 

 ついに蛍火は迎撃が間に合わず、守護者のブレスを受ける。ブレスをまともに被ってしまうと判断した蛍火は顔を守る。

 以前にも言ったように蛍火のコートは特別製だ。そのお陰で守護者のブレスは耐え切ることが出来る。

 しかし、守護者の目的はブレスによって蛍火に一撃を与えることではなかった。そう、唯の目潰し。

 守護者は距離をさらに詰め、その強靭な爪で蛍火に一撃を与える。

 

「グフッ」

 

 なす術も無くその攻撃を喰らい、蛍火は吹き飛ばされる。

たまっていた疲労がここに来て一気に出たのか蛍火は動く事が出来ず、床に這い蹲った。

 追撃とばかりに光球を収束させたレーザーが蛍火に襲い掛かり、脚を貫く。

 だが、それでも蛍火は足掻く。まだ、ここで終わりではないのだから。

 

(力を欲するか?)

 

 己の内より聞こえる声。それは観護の中にあるどの声でもない。

 

(力を欲するか?)

 

 再度聞こえる。それは誘惑。己の無力さに嘆く者に対する誘惑。

本来、蛍火はこの声に応じることは無い。しかし、蛍火はこの時だけは力を欲した。

 

(欲しい。この身焦がすほどの力を、この身汚すほどの闇の力を、この身滅ぼすほど絶望的な力を!!)

(契約は結ばれた。存分に力を振舞ってください。マスター。)

 

 

 

 

 

 

 


後書き

 さて、歴史の歪が全てを狂わせました。

 本来、大河たちの実力があれば、原作の守護者を殺しつくす事ができたのです。

 もちろん、リコとの連携を上手くすればという前提がありますが。

 しかし、蛍火というイレギュラーがここにまで影響を与えてしまった。

 そして、蛍火が戦うはめになるが、それでも守護者には届かない。

 蛍火の予想通り、守護者には何かが介入しています。まだそれが何かは明確に言えませんが。

 漸く原作から離れた物語が始まるとだけ今はお伝えします。

 

 

 

 

 

 やっと、ここまで来た。

??「…………」

観護(…………………)

 あの、お二人様? 沈黙が怖いんですが、

??「ペルソナ、死ぬ覚悟は出来た?」

 なっ、何!? ちょっと待て、俺は殺されることは何もしてないぞ!! たぶん

観護「へぇ? 未亜や大河をあんな目にあわせたのに?」

??「蛍火に傷を負わせたのに?」

(真っ青)

??&観護「(我流・奥義の壱 鬼切!!!!)」

 手加減してない方!!!!!?

 あぁ、もう完全なる殺し技なんだから簡単に使わないでよ。

??「なんで生きてる?」

 SS作家はSSの中ではどんなに理不尽であっても死なないの。

観護(本当に理不尽ね)

 分かってるさ。

??「まぁ、すっきりしたから今回はまだ、許すけど、次はない」

 気をつけます。

??「それで、あの声、誰?」

 うん、それは次回に持ち越しの予定。ちょっと今までにない話の切り方をしようと思ってね。

観護(次の話も一緒に送るって言うのに?)

 それを言うなよ。まぁ、ともかく未亜のお陰でかなり守護者との戦いは善戦した。けれど、やっぱりここでも歴史の歪が。

??「かなり、大きくなってる」

観護(そうね。あそこで蛍火君が出なければ確実に未亜は悲惨な眼にあってたわよ)

??「それに蛍火が守護者相手に手間取ってる」

観護(はっきり言ってちょっとの歴史の歪じゃ済まされないわよ)

 うん、だからここはこの物語の第一の転換点。

観護(かなり歪ませるつもりね。第二もあるの? というかなんかさらに沢山ありそうな気がするんだけど)

 それはいえない。まぁ、こっちの都合だから。

??「蛍火、格好良かった」

 あははは、君にはそこが一番重要だね。

??「じゃあ、次回予告」

観護(あの声は一体誰なのか? 蛍火君は守護者を倒せることカが出来るのか!? ご期待ください)

 では、次話でお会いいたしましょう。後、次話でもothers viewは続きますのでご了承ください。





いや、本当に気になる!
美姫 「あの声は何!?」
思わず、白の主になったのかと思ってしまったが。
美姫 「少し違うようね」
ああー、気になる。
美姫 「多分、皆気になってると思うわよ」
ならば、くだくだするよりも、さっさと次回へ!
美姫 「次回はすぐこの後!」



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