買い物を終えて学園に戻った俺は確認のため墓地に向かった。

頑丈に閉じられていた扉は開いていて鍵とだったもの壊れて足元に転がっていた。

 大河がすでに開けたか。なら、時計の針を進めるとしよう。

 扉をくぐると墓地であるせいか、外よりも少し気温が低く感じられた。不気味な雰囲気が漂っているせいもあるだろう。

この荒廃した墓地で彼女は一人来るかどうかも分からない人物を唯、待ち続けていた。

それに寂しさを感じた事は無かったのだろうか?辛いと感じたことは無かったのだろうか?

それを知る術は俺には無いな………。

 

 

 

 

 

 

 

第八話 過去の鎖

 

 

 

 

 

 

 

少し歩くと目的に人物に出会えた。

褐色の肌にピンク色のウサギの耳にも見えるリボンをした女性、ナナシだ。

………いや、現時点では彼女に名前はないか。

彼女には悪いがナナシという存在自体は役にはたたない。最後には必ずルビナスが必要になる。

だから、ルビナスの記憶を早い段階で取り戻せるように彼女のロザリオが必要だ。

 

「初めまして、お嬢さん。こんなところでどうかしましたか?」

 

 分かりきったことを聞かなければならないのはどうにも面倒だ。だが、それが俺の役割だ。

 

「ここはお家ですの。いるのは当然ですの〜。それよりもダーリン知りませんですの?」

 

 キョロキョロと周りを見ながら俺に聞いてきた。

 はは、こんな話し方する奴が目の前にいると笑えてくるな。大河、お前よくこんなのと普通の話できるな。

俺はとてもじゃないが仮面でもかぶっていないと話せないぞ。

 

「どんな格好をしていましたか?」

「髪の毛がぼさぼさで前髪が目の下まであって、見たこと無い服を着てたですの〜」

 

 間違いなく大河だな。俺からしたら普通の服でもナナシからしたら見たことも無い格好をしてたことになるな。

よく、考えたらここにずっといるのに外にいる連中と似通った服を着ている。どうやって手に入れたんだ?

 

「それは当真ですね。一緒にいた女性が大河君って言ってませんでしたか?」

「そういえばぁ、そんな事言ってましたのぉ〜」

「間違いないですね。当真の居場所を教えてもかまいませんがその前に貴女の家を案内してもらえませんか?

少しそこに用事があるので」

「案内したらダーリンの居場所教えてくれるんですの?」

「はい。ちゃんと」

「了解ですの」

 

 足元には石がごろごろと転がっているのにスイスイと先に歩き案内してくれる。

簡単にいうことを聞いてくれるとは、ノータリンすぎるぞ。設定とはいえもう少し人を疑えよ。

 

「ここですの〜」

 

 そこには彼女の墓につき、俺は早々に墓に手を入れる。

 

 

 

 

 指先に痛みが走る。痛みのしたところを重点的に掘る。

ロザリオがあった。これで彼女がいつでも記憶を戻せるようになる。彼女は学園長の戒めと補助をしてくれる存在だからな。

時計の針を戻すことはできない、しかし時計の針を進めることはできる。なるべく大河がいい方向に向かうように

 

「ふぁ〜。きらきらしてて綺麗ですの」

 

 彼女の目もきらきらと光っていた。すんごく欲しそうにしている。

 

「これは貴女のものです。失くさないでくださいね?後、できれば当真につけて貰って下さい」

 

 彼女の首には俺はつけない。これは絆。ルビナスとナナシと大河を繋ぐ絆、俺が本来触れていいものではない。

 

「いいんですの?………はっ、でもこれは浮気になってしまいますの〜」

 

 欲しいけど受け取れないと悩んでいる。人の話を聞いてないのか? 

それでも千年前救世主として崇められた存在の断片なのか?先が不安だね。

 

「それは貴女の家から見つかったものですか貴女の物です。浮気にはなりませんよ」

「それなら安心ですの。用が終わったのなら速くダーリンの場所教えて欲しいですの」

 

 寮の場所をナナシに教え、夜這いに来ることを進めた。今行くなといっても聞かないだろうがそういえば従うだろうと思ったからだ。

 今日は後、大河とブラックパピヨンが戦うところを覗くだけか。これが終われば自分のことに専念できるな。嬉しいねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 寮の風呂は俺と大河が来たことによって本来女子専用の風呂が時間性に変わった。大きな風呂に入るのはやはり心地いい。

ここの風呂は美肌効果もあり俺の肌はすべすべだ。嬉しくともなんとも無いが。

 

 

窓を開け夜風に当たりながら今日買った煙管に火をつけて深く肺にいれる。

昨日も思ったが人工灯がないせいかここの夜空はたとえようも無く綺麗だった。夜空と煙草を楽しんでいた。

 

「うわぁああああああ!!!!!!!」

 

 大河の悲鳴によってぶち壊しになった。おいおい、相手はゾンビに思えても女の子だぞ?夜這いかけてもらって悲鳴上げちゃ失礼だろ。

あぁ、あのノータリンは気にしないか。

 

 廊下と階段がガタガタと騒々しくなり、その後一気に音が引いた。

大河がベリオに助けを求めに行ったか。なら森に先回りして待っておきますか。

 

 

 

 

 

 

 歩道が設置されている横の森に少し入り、火をつけていない煙管を咥えてただ、待ち続ける。念のため観護を出しておく。

 

(煙草なんて体に悪いわよ。若いうちから吸ってたら長生きなんて出来なくなるわよ。)

 

 わざわざ、そんな事を言ってきてくれた。別に長生きするつもりも無い。長生きすればするほど生き恥を晒すだけだ。

それに、動けない体で他人の世話になり生き永らえさせられるのは耐え難い。

自分の足で立って、自分で自分の世話を出来ない存在に生きる価値はないとさえ思っているからな。

 

(人の嗜好をとやかく言うなよ。お前らの内何人かは吸ってるだろ? 一緒さ。

それと俺を自分たちの子供と混同するな。お前らは自分達の子供のことだけ考えていろ。)

 

 そう言ったら、それ以後煙草については何も言ってこなかった。

まぁ、観護からしたら俺も子供のうちにしか入らないだろうがな。

 それにしても親というのはどうしてこんなにも五月蝿いのだろう?

まだ、自立もしていない本当の子供なら分かるが、

この年になったら社会の仕組みも分かり自ら明日を選ぼうとしている考え悩む者に押し付けるのは邪魔になるだけだというのに、

 

 

 

 

 

 

 

 歩道のほうから声が聞こえてきた。大河とブラックパピヨンが来たか。自分が生み出された経緯、自分とベリオの出生の秘密。

どうしてこんなことをしているか。大河に愚痴っている。

 

 自分の境遇、親の存在、出生を選ぶことが出来ない。

人は裸で産まれてくるんじゃない。立場とか社会のしがらみとか色々抱えて産まれてくる。

それを認識して上で自分が着る服を選んでいかなければならない。

産まれた時から抱えていたものを、おっとこの場合は物心つく前に抱えさせられたものか。それを呪うだけなら子供でも出来る。

ベリオ……結局お前は自分で着る服を他人に選んで貰っているに過ぎない。

もう少し大河を見習え、あいつは自分でちゃんと選んでいるぞ。

 

 

 

大河とブラックパピヨンが戦うことになった。見る必要は無い。

しょせん、ブラックパピヨンは子供だ。世界を恨んでいるだけの。

 

そんな子供に大河が負けるはずが無い。

それに大河は天才だ。

重量、間合い、扱い方、その全てが異なる武器を一つの戦いの中で瞬時に最善の形態を選びそれをテンポ崩すことなく扱えるという事と、一つの戦いの中で急激に力をあげることに出来る大河に勝てはしない。

そして、信念を持った大河には……、

 

だが、まぁそんなに才能があったとしても弱点は存在する。真面目に戦えば確実に大河が勝つが。

あぁ、やっぱり。女物の下着を投げられただけで反応するな。

しかも、手に届く範囲にある投げられた下着を懐にしまいながら戦っていやがる。

それでも未だ有効打を貰っていないのは喜ばしいことなのか?

 

 

観護にアクセスし、殺気の扱い方が上手い奴を検索する。

だいたい似たりよったりか。できればブラックパピヨンのみに殺気を向けられたら最適なんだが、

ダメだな。殺気をフェイントにまで使えるほど使い手はいないか。某赤い騎士みたいに担い手が極めたものではないからか。

さて、どうするか。

近くに小枝が落ちている。ふむ、これならいいだろう。

これを踏んでも戦闘に集中している大河は気付かないだろう。だが、ブラックパピヨンは?

対多数になれているブラックパピヨンは少しの音でもしたなら、気が一瞬でもこっちに向くだろう。

小枝を踏み鳴らす。一瞬だけブラックパピヨンの気がこちらに向く。

だが、それだけで十分。

その隙を見逃すほど大河は弱くは無い。

 

 

 

一撃で決めたか。上出来だ。

さて、戻って寝るとしますか。他人の情事を覗くほど俺は野暮ではないからな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

煙管に火を付け、吸いながら歩く。これでベリオは安心か。明日から講師が来ることだし、自分に専念しないとな。

あっ、やべぇ。セルを訓練に誘うの忘れてた。

 

セルを呼ぶのには訳がある。

決意はしたけど途中でくじけてしまう可能性もある。

その時同じ師につく存在がいれば負けたくないという気持ちと自分だけやめていいものかという気持ちを利用しようとしてたのに。

まぁ、まだ間に合うだろう。説得するための言葉考えないとな。

まぁ、未亜をダシにするのが簡単だろうな。

 

 

 

 

色々と考えていたが一瞬殺気に近いものを感じ、咄嗟に避ける。

案の定、植木鉢がさっきまでいた位置を通り過ぎていった。よかった。観護をしまってなくて、

こんなことするのは一人しかいないか。

後ろを振り向くと裸同然の人が立っていた。恥ずかしくないのか?

 

「こんばんは。会うのは二度目ですか、怪盗さん。私に何か御用でも?」

「そうだねぇ。覗き見するような奴にちょっとお仕置きをしようと思ってね。」

 

 ブラックパピヨンは嗤っていた。それはもう笑っているのではなく嗤っていた。

 まぁ、気付かれているか。それにしても過小評価しすぎていたな。

先入観は持っているのはやっぱり厄介だな。もう少し気を付けるか。

 

「そんな輩がいたんですか。捜すのをお手伝いしますよ?」

「必要なんて無いさ。もう目の前にいるからね」

 

 いつでも飛びかかれるように体制を整えている。確信までしているか。

こんな時間に外を出歩いているのは限られているからか。どうしようか。しらばっくれるのも難しいそうだしな。

 

「私がですか? 私はただ散歩しながら煙草を吸っていただけなんですけどね」

「しらばっくれたって無駄だよ。あんただってのはすでに分かってるんだから。

これ以上シラを切るつもりならこっちも手はあるんだから」

 

 と、何所から取り出したのかメモ帳みたいなものを警察が手帳を出すみたいに見せ付けてくれた。

 

「え〜と、あんたの秘密はっと、」

 

 ページを必死に捲っているが俺への注意は忘れていない。ここら辺は俺も見習わないといけないな。

あっ、ページがもう無い。また最初から確認してる。どうしたんだ?

 

「無い、無い、無い。……………嘘っ、あんたの秘密が何も無い!?」

 

 もしかしてその手帳、学園全員の秘密を書き記してるのか?何か盗むだけじゃなくてそんな事もしてたのか。

まぁ、他人のプライドを盗むのが性癖だから納得は出来るが、俺のを探したところで無駄だと思うぞ?

俺にはそもそもプライドといものがないからな。

 

「そんな………、本当に何も無い」

 

 呆然としてしまっっている。そんなに可笑しな事かね。

まぁ、盗めないものはないと自負しているんだとしたらその事実に愕然とするか。

ははっ、それにしても俺はこんな異世界に行っても異常であることには変わりないのか?

 

「こうなったら実力行使ではかしてやる」

 

 ブラックパピヨンは鞭を振り回していた。厄介だな。

鞭は途中で軌道を変えることが出来、中距離を支配する。その上皮膚に当たれば容易に裂けてしまう。

鞭を振るい、時には色んなものを投げつけてくる。

勝ちに行こうと思えば出来なくは無いだろうが、まだ俺の力量を知られたくはない。

潔く認めるとしますか。

 

「待ってください。覗き見してました。認めますからもう止めてください」

「ふんっ、やっと認めたかい」

 

 と鞭を止めた。ご丁寧に投げた下着類は回収していた。

君は女王様か?それを振るうのは大河かM相手だけにして欲しい。俺はSだからね。

 

「それで、認めましたけど口封じはどうするんですか? また鞭でも振るうんですか?」

 

 先にこれからしそうなことを口にすることで人は二つの反応をする。

自分にとって好都合だと認めそれを実行する柔軟な者。それを口に出されたことにより選ぶことが出来なくなるプライドの高い者。

ブラックパピヨンは後者に属し、鞭を振るえないでいた。

 ここで止まっても話は終わらない。明日から本格的な鍛錬があるんだ。休息をきちんととって明日に備えたい。こちらから仕掛けますか。

 

「なら、貴女の正体を口外にしないと約束する代わりに貴女に何かして貰うということにしませんか?等価交換です」

「信じられないね。あんたみたいな奴。裏でこそこそするような奴が真っ当な取引するもんか。」

 

 吐き捨てるように断言した。彼女にとっても俺みたいな存在は許せないのだろう。

 たしかに、信じられないだろうな。俺もダウニーみたいな奴は信じれんからな。

もっともあいつは俺みたいに簡単に裏があるって気付かせてくれないだろうが…、

ダリアも学園長も実はそうなんだよな。上に立つものは自然とそうなるのかね。

 

「それにあんたのその目が気に入らない。

顔は笑ってるのに目だけは、その目だけは凍てつく位に冷え切っている。笑ってないんだよ、あんた」

 

 俺の眼を射抜くようにブッラクパピヨンの眼光が細まる。そんなところに気付いたか。

怪盗という職業は侮れないな。となるとダリアには確実に気付かれているか。厄介だな。

 

「だからあんたの取引には応じれないね。」

 

 決して屈しはしないとれるほど強い言葉で言い切った。

俺のことをいけ好かなくてもカードはこっちが握ってるんだ。嫌悪感が先立ってその事を忘れているのか?

メモ帳を見ていたときとはえらい違いだな。

 

「どう思われようと気にしません。ですが貴女の秘密は私が握ってしまいました。こちらの話を聞く必要が貴女にはあるはずだ。

それに、私が交わした約束は契約と同じです。貴女が破らない限り私自身はよほどの事が無い限り破ることはしません。

誓いますよ。私という存在にかけて」

 

 ブラックパピヨンは俺を訝しげに見ている。口約束でここまで言う奴は普通いないからな。

だが、俺にとっては紙にサインする契約も、こうして口だけでする約束も同じようにほぼ確実に履行しなければならないものだ。

 

「はぁ分かったよ。それでなんだい?金かい、それともどっか誰かの秘密かい。それともあたしの体かい?」

 

 根負けしてくれたようだ。後であのメモ帳に契約には五月蝿いって書かれなけりゃいいけど。

 それにしてもすぐに男が女の体を欲するように思わないで欲しい。俺はそんなもの欲しくは無いというのに。

大河のせいか。あいつもある種厄介な存在だな。あっ、でも二番目はちょっと気になるな。

 

「いえそれよりも、大河の世話を焼いてやってください」

「あん? あたしの体じゃ不満だっていうのかい?」

 

 不機嫌そうに睨んできた。よっぽど自信があったのだろう。だが俺には目に毒なだけだ。

 

「違いますよ。今ある優先順位を考えてそれよりも上があるというだけです。

貴女も知っての通り私は大河に強くなって欲しいと思っています。

貴女の戦闘スタイルは他に類を見ない。貴女が大河にちょっかいを出してくれればそれで大河の力になる」

「ふ〜ん。たしかにそうだけどさ。何でそこまでするんだい?あんたの行動は本当にあいつを鍛えようとしている。

そこまでするあんたのメリットが思いつかない」

 

 彼女にとってもそれは納得できない内容なのだろう。

たしかに、先を知っていなければ今していることはお節介の他なんでもない。

だが、後顧の憂いを断つため必要だ。

 

「平穏な日常を約束してくれます。当真はきっと破滅を滅ぼしてくれます」

「大河が?誇大妄想じゃないかい。それにあんたが平穏? 

馬鹿いってんじゃないよ。そのドブみたいに濁った眼をしておきながら言うセリフじゃないよ」

 

 俺の眼はドブ扱いですか。そこまで言われたのは初めてだぜ。これでもスラムに住んでる奴より良い生活送ってきたんだが。

まぁ、腐る奴はどんな状況にいようと腐るか。俺のように、

 

「眼は関係ないと思いますが。それに人は信じあうことから始まるんですよ」

「契約だけは信じられるけど、それ以外の部分は信じられないね。まぁ、いいよ。

それであたしとベリオの秘密を口外にしないって約束してくれるなら安いしね」

 

 やっと清々したと体を伸ばしている。最初からそれだけ言えばすぐに済むというのに。やれやれ、やっと眠れるな。

それしにてもやっぱり予想外というのは面倒だな。もう少し予測の幅を広げて行動しないと。

 ブラックパピヨンに背を向け、また煙管を口に咥えながら寮に向けて歩こうとして思い出した。

こっちも口封じしないといけないの忘れてた。

 

「後、一つ忘れていたことがありました。私が今日、貴女にあったことを当真に、そしてトロープさんには話さないでください」

「別にかまわないんじゃない?」

「そういうわけにも行きません。貴女が闇夜に舞、絆というものに踊らされている存在であるように、

私は影夜に潜み、運命の繰り糸に操られる道化。表舞台の人に知られる必要が有りません」

 

 観護という、契約主の意思によって動く道化。サーカスで笑いものになりそれでも舞台を繋ぐための存在。

俺が傷つこうが故障しようが舞台のメインキャストに心配させてはならない。

何をしているのかも知られてはならない。裏にいると決めたのだから。

 

「道理で、あんたがいけ好かないと思ったよ」

「先ほども述べた通り貴女に、いえ。誰にどう思われようと私には関係ありません。私は私の役割を演じるだけです。

そこに他人の感情も私の感情も入る余地はありません」

 

 ここにいる間はどれだけ大河の存在を眩しく思えても、誰かに憎悪を抱こうとも関係ない。

俺は大河を誘導するという役割がある間は。

もっとも後者はありえない話だ。

 

「はっ、おかしな奴だよ。ほんと」

「そんな格好をしている貴女に言われたくは無いですよ」

 

 ダリアだってそんな格好しないぞ?もう少し慎みを持って欲しい。もっとも、無理だと分かりきっていることだが、

 

「それでは良き夜を、良き狩を」

「あたしがしてる事を止めないんだね。あんたは」

「貴女が私に手を出さない限り必要性がありませんから、それにさっきの言葉はお別れの言葉だったんですが」

「気になったもんだからね。ふふっ、たしかにあんたはヒーローっていうよりヒールだね」

「自覚はしています。ではまたいつか何処かで」

 

 今度こそブラックパピヨンに別れを告げる。彼女と会うことは大河と違って、二度とないだろう。

悲しくとも何とも無い。俺達の役割は決まっているのだから。

 それにしてもヒールね。よく言い当ててるよ。

俺が大河と敵対すると言いたいのかね、彼女は?まぁ、それも可能性のうちに入れておこう。

あいつの幸せな未来って奴にするために俺があいつと殺しあう可能性を………、

 

 

 

 


後書き

 ナナシとの出会い。それによって蛍火は時計の針を進めた。

 蛍火は確実にこの世界で、自らが望むように針を進めています。

 そしてパピヨンとの決着。

 蛍火自身は殆んどといっていいほど介入してませんがそれでも少しずつ変化が…、

 

次回は蛍火がミュリエルに頼んだ講師が来ます。どんな人物なのか楽しみにしてくださると嬉しいです。

 原作にはそんな役割のキャラはいないのでもちろんオリキャラです。無謀極まりないと思いますが頑張りたいと思います。








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