*今回かなりグロイ表現があります。注意して下さい。

 

 

 

第二章:刺客

 

 

 

 

 

 

 

 

 

??「アハハハ……」

 

 不気味に微笑む綺麗な黒髪で短髪の幼い子ども。恐らく10代前半のようだ。

 

「や、やめ!!」

 

 そんな子どもを見て恐怖を顔に、さらに目に涙を浮かべ何かを止めるように懇願する男性。服装を見る限り呉の兵士のようだ。

 

 トンッ

 

 バキッ

 

「ああああぁぁぁ!!!」

 

 黒髪の子どもは呉の兵士の足の指に向かって金槌を振り下ろした。

 

 だが、勇敢な呉の兵士が足の指の骨を折られそうな程度で目に涙を浮かべ懇願するなどありえない。

 

しかし、呉の兵士の手足を見てみると両手、両足の指の爪が剥がれ、先ほど折られた指と同様全て骨が折られている。それに加え、鼻は折れ、肋骨(ろっこつ)が全部折れ、折れた骨が臓器に刺さってしまっているらしい。恐らく呼吸も困難な状況だろう。

 

 たぶん呉の勇敢な兵士でなければ気を失っているであろう程の痛みが体中に奔っているハズだろう。

 

「―――――!―――――!―――――――――――――!!」

 

 声にならない悲鳴を上げる。

 

 もはや痛み以外の感覚は無いハズだ。

 

??「アハハハハ…。スゴイね。今までの人たちだったらもう殺してくれって言うのに、まだ止めてとしか言わないんだね………。」

 

 最高の玩具を見つけたと本当に楽しそうに笑いながら言う。

 

??「兄様。あっ、『それ』まだ大丈夫もってたんですわね。」

 

 すると、もう一人瓜二つの顔をした綺麗な黒髪で長髪の子ども(双子のであると推測される)が部屋に入って来た。

 

 そして、呉の兵士を『物』扱いし、この惨状を見て楽しそうに微笑む。

 

??「うん。『これ』スゴイよ。こんなのがたくさんいるんなら楽しそうだよね。……でも、もう『これ』にはもう飽きちゃった。」

 

??「そうですわね…。もう十分楽しみましたしね。」

 

 二人とも顔に笑みを浮かべながら、

 

「っっっ!!!!」

 

 呉の兵士に止めを刺した。

 

??「それじゃあ、新しいモノを捕りに行こうか。」

 

??「えぇ、行きましょう、兄様。」

 

 そして、二人は部屋を出て行った。

 

 死体をそのままにして……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ところ変わり、呉の軍議室。

 

 そこには、呉の代表として雪蓮と周喩、楊州の代表して劉ヨウ(中年のデコが少し広い男性)と太史慈(深緑のセミロングの髪で、胸は……残念)、荊州の代表として袁術(髪は袁紹同様に金髪ドリルで、胸は平均ぐらいである)と紀霊(わずかに茶色がかった短髪で、引き締まった体でかなり男前の青年)がいた。

 

劉ヨウ  正史では賄賂を奨励し、悪事を働く高官たちを告訴し処刑した。そして、揚州の勅使となったが、孫策に攻められ大敗した。

 

太史慈  劉ヨウに仕え、孫策が攻めてきた時先鋒の大将として出陣する。その戦いで孫策と一騎討ちを挑み引き分けた。その後、劉ヨウが逃げるが太史慈は抵抗を続けたが孫策に捕らえられる。だが、孫策は縄を解き破格の厚遇でむかいいれる。その後は黄祖討伐の際にも活躍し、その活躍を聞いた曹操から家臣の誘いを受けるが、コレを退け、孫権に忠義を尽くした。正史では赤壁の戦いの前に病死しているが、演義では合肥の戦いで張遼と戦い死んだとなっている。

 

袁術   正史では従兄とも異母兄とも言われている。民に圧政を行い自分は豪華な生活を送っていた。一時期は孫策を配下に置き袁紹と対立したが後に孫策は離反した。そして、皇帝僭越をし、国号を「成」とした。だが諸侯の賛同を得られず、配下も次々と離反し、不利になり、袁紹の元へ亡命を試みるがその途中で病死した。

 

紀霊   正史ではほとんど記述がないが、袁術配下では最も有名な者も一人であったらしい。演義では関羽と互角に渡り合うが、張飛に一撃で討ち取られた。

 

術「いや〜〜、どうもどうも皆さん久しぶりです。」

 

 すると、袁術が場違いな軽い雰囲気で会話を始める。

 

雪「二度と会いたくなっかとのもいるけどね。」

 

 といつもと違い刺々しく言う雪蓮。どうやら相当気が立っているようだ。

 

ヨウ「あぁん?ふざけたこと言ってんじゃネェぞ!」

 

 怒気を露にして軽く怒鳴る。

 

慈「劉ヨウ様、ここは穏便に…。」

 

 すると太史慈が仲介をする。

 

喩「雪蓮も、怒りはもっともだがココは抑えるべきだ。」

 

 雪蓮は周喩の忠告をうけ、怒気を抑える。

 

術「まぁ、互いに被害を受けているんだから、互いの怒りは抑えて対策を話し合いましょう。」

 

雪「えぇ、わかってるわ。」

 

 何時に無く機嫌が悪いが何とか抑えながら返事をする。

 

術「それでは今回の件について互いに話し合いましょう。」

 

ヨウ「話し合うことなんてそんなに無いだろーよ。」

 

 若干投げやり気味にそう言った。

 

術「まぁまぁ、取り合えず孫策さんはどうするつもりなのですか?」

 

 なだめながらも雪蓮に話をふる。

 

雪「別に変わったことはしないわ。ただ賞金を出すだけよ。」

 

術「ほぉ〜〜、いくらですか。」

 

 感心したように聞き返す袁術。

 

雪「我が国はあなたの国と違い民から無理な搾取をしていませんから大した額は出せませんからお気になさらないで下さい。」

 

 とあからさまに皮肉を言う雪蓮。

 

術「あんまりなめたことを言わないで下さいね。こちらにも我慢の限界というモノがありますから。」

 

 初めて怒気を露にする袁術。

 

霊「進めましょう。」

 

 一言ボソリと言う紀霊。

 

術「ふぅー。そうですね。我々の対策としてはこの国の国境の封鎖と、我らの軍の駐屯を認めて頂きたいと思っています。」

 

ヨウ「こちらもほぼ同じ条件だ。」

 

 と、業務的に話を進めていく。

 

喩「ふざけるな。」

 

 周喩が一言、確かな拒絶の意の言葉を言う。

 

喩「貴様らは今回の件に絡んでいる可能性があるのに軍の駐屯、さらに国境の封鎖など認められるわけ無いだろ。」

 

 現段階では誰が犯人か断定されていない状況で軍を駐屯を許可するのは相当リスクを負うはめになるかもしれない。さらに、国境の封鎖などをすれば商業の交友が滞り、長引けば経済の発展を妨げる一因となる。

 

ヨウ「あんなぁ、あんまりなめんなよ!!こっちだってな被害受けてんだよ!!」

 

 だが、劉ヨウたちも被害者なので当然納得できないようだ。

 

やはりイライラと言った感じで怒鳴る。

 

慈「劉ヨウ様。穏便――グッ。」

 

 バキッ

 

 諫めようとする太史慈を劉ヨウは殴った。

 

ヨウ「うっせーー!!てめぇーは黙ってろ!!!!」

 

 バキッ

 

 さらに劉ヨウは太史慈の顔を殴った。

 

慈「………はい。」

 

 そんな仕打ちを受けた太史慈だが不満そうな顔一つせず、口から出た血をぬぐい返事をした。

 

 そんな太史慈に雪蓮は哀れみと感心を覚える。

 

術「劉ヨウさん。あまり人は殴らない方がよいですよ。」

 

 袁術が劉ヨウの行動を諫めると、国の力関係的に逆らえない劉ヨウはソッポを向きながら黙る。

 

術「ですが、確かに我々にも被害が出ているのに犯人扱いするのは心外です。それに、我々が呉を攻めるなら正々堂々真正面から戦争するか、暗殺であなた一人を殺します。」

 

 正論を言う袁術。

 

雪「そうね。」

 

納得したように一つ頷く雪蓮。

 

喩「雪蓮?まさか…。」

 

 そんな雪蓮に向き直る周喩。

 

雪「そのまさかよ。冥琳。了承するわ。」

 

喩「せ、雪蓮!!」

 

 そんな雪蓮に対し珍しく声を荒げる周喩。

 

雪「でも、軍の数はこちらで制限させてもらうわ。それに国境は封鎖せず、検問を設け、その検問の警備員は呉の兵士で組織させていただきます。」

 

 そんな周喩を無視し、条件を話す雪蓮。

 

術「えぇ、そのくらい当然です。劉ヨウさんも宜しいですね?」

 

 と、劉ヨウに問いかける袁術。

 

ヨウ「あ、あぁ。異存はない。」

 

 ぶっきらぼうに応える劉ヨウ。

 

術「では、今後は互いに連絡を取り合い協力して犯人の捜索に尽力を尽くしましょう。」

 

雪「それは拒否するわ。」

 

 袁術の提案を拒否する。

 

術「は?何をい――――」

 

雪「だから、これは私たち呉の問題なの。あなたたちは居てもいいけど、ただし、邪魔だけはしないで下さい。」

 

 そう言うと、身を翻し軍議室を出て行く雪蓮。

 

 それに続いて周喩も出て行った。

 

術「ふぅー。まったく…。昔から頭にちが上ると周りが見えなくなるからこまりますねぇ。」

 

 本当に困ったといった表情の袁術。

 

ヨウ「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 そして、劉ヨウは黙り込んでいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

昭「雪蓮様。なぜ奴らの条件を飲んだですか?危険だと承知しているんですか?奴らの言い分を信じるんですか?」

 

 すると軍議室の外で待っていた張昭が質問する。

 

雪「当然信じてないわ。」

 

喩「じゃあ、何故?」

 

 雪蓮が袁術たちの言い分を信じて了承したと思っていた周喩が尋ねる。

 

雪「今回の件は私の暗殺を狙って、暗殺者を送り込んだと思うんだけど、きっとその暗殺者の手綱を握れてないのよ。結果、その暗殺者は好き勝手暴れまわってしまったといった感じだと思うな。だから、あいつらが犯人なら尻尾を見せるハズよ。」

 

喩「なるほど。それもそうだな。」

 

 普段の周喩だったならこのくらい察しがつくハズだが、どうやら周喩もわずかながら頭に血が上っていたようだ。

 

 そして、そんな雪蓮の考えに張昭は「おしいです。」と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その後城壁で張昭と眼鏡をかけた男性がいた。

 

??「さすが『江東の小覇王』ですね。」

 

 感心したように張昭に話しかける眼鏡をかけている男性。

 

昭「当然です。でなければ私は彼女に仕えません。」

 

 感情を籠めずに言う。

 

昭「で、『アレ』を早くどうにかしてくれますか?干吉。」

 

吉「どうにかしたいのはこちらも同様なんですが、『アレ』に近づくと私まで殺されるのでちょっと無理ですね。」

 

 互いに顔を見ずに会話を交わす張昭と干吉。

 

昭「ふざけた事を言うな!『アレ』に本郷を殺らせるだけという話のハズです。早くどうにかしなさい!」

 

 初めて干吉に顔を向け、声を荒げる張昭。

 

吉「それはあくまで『予定』です。全てが旨くはこぶハズありません。」

 

 無表情で張昭に言う。

 

吉「大丈夫ですよ。孫策殿に危害は加えません。」

 

 そう言うと干吉は夜闇に消えた。

 

昭「くっ…。」

 

 後に残されたのは悔しそうに歯を食いしばる張昭だけだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

一「辻斬り?」

 

 所変わってここは呉の酒場。

 

 昼間っから飲み続けている奴らが点々といる。

 

泰「そう。んないかれた事をしている奴がいるらしいんだ。まぁ、辻斬りってより通り魔に近いかようだがな。」

 

 と言いながら酒を口に流し込む昼間から飲んだくれてる奴@。

 

ル「しかも、呉の兵士がほとんどらしいです。」

 

 ルーシェは飲んでいないらしい。ちなみに一刀も飲んでいない。

 

泰「つっても、他国の商人のヤローも殺られたらしいから今日、姉御(雪蓮)が被害にあった奴らの国の代表と会議中らしいぜ。」

 

 またも酒を口に含む。

 

一「あぁ、それで今朝あんなに殺気立ってたのか…。怖かったなぁ。」

 

 今朝の雪蓮を思い出し身震いする一刀。

 

ル「それでですね、賞金も出るらしいんですよ!」

 

 ちょっと興奮気味に情報を伝える。

 

泰「おっ?ホントか!?

 

 金が出ると知りこちらも興奮気味にみを乗り出す。

 

一「はぁ、まったく…がめついなぁ…。」

 

泰「むっ。がめついとはなんだ!がめついとは!!現実主義と言え!!」

 

一「へいへい。」

 

 ちょっとムカッついて絡んできた周泰を軽くあしらう一刀。

 

ル「でも相当の額が出ると聞いています。カズト、手伝ってくれませんか?」

 

 と、どこで覚えたのか軽く上目遣いをして懇願する。

 

一「めんどくさい。」

 

 だが一刀に完璧に一蹴された。

 

ル「むぅ〜〜〜〜。」

 

 膨れっ面をする。

 

泰「んじゃ、私が手伝ってやるよ!」

 

ル「えっ?ホントに?ありがとう!」

 

 ルーシェが周泰の手を握ろうとするが周泰は手を引っ込めた。

 

ル「ヘブッ!」

 

 そして、顔面をテ−ブルにぶつける。

 

泰「でも、ちゃんと分け前は5:5だぞ!」

 

 何故か胸を張り偉そうに言う。

 

一「オイ、明命(みんめい)。ルーシェから持ちかけた話だろ。最低でも6:4がスジだろ。」

 

 そんな明命を諫める。

 

明「む……むむぅ………。」

 

 正論に、いや、一刀が言ったので押し黙る。

 

 昔の仲間が今のこの明命の姿を見たなら「誰だ?お前?」って言われるに決まっている。

 

一「でもさ、珍しいな。お前が金に引かれるなんて……。」

 

 と言うとルーシェは真面目な顔をした。

 

ル「うむ。爺やたちは働いて金銭面を工面してくれているが、私は何もしていないので常々何かしたいと思っていたから……この機に大金を稼いで、爺やたちを楽にしてやりたいと思って……。」

 

 しかし、そんな健気なルーシェに、

 

明「普通に常日頃から働けば良いだけじゃん。」

 

 無情な突っ込みを入れる。

 

+一「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 黙り込む二人。

 

明「ま、とりあえず、何にも情報がない状態じゃ動きようが無いから、何か情報が入ったらまた連絡するよ。」

 

 そんな二人の様子を無視し帰っていった。

 

ル「働こうかな……。」

 

一「あいつの言うことをそこまで気に留めなくても良いんだよ。お前はとりあえず勉強しろ。」

 

 落ち込みながらボソリと呟くルーシェを慰める(?)一刀。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪「被害状況は?」

 

 雪蓮は業務的に傍らにいる兵士に被害状況を尋ねる。

 

 軍議の翌日の早朝。早速昨夜のうちに動きがあった。

 

「はっ!税を徴収に来た兵士、店員、一般客も含め全員死亡しました。」

 

雪「そうか…。」

 

 無表情に返事をする。

 

「ですが、店主が我々が駆けつけた時にまだ息ががあり、その者から詳しい状況を聴いた後に亡くなったので犯人の人相などは判明いたしました。」

 

 兵士がそう言うともの凄い形相で兵士に向き直った。

 

雪「詳しいことを聴かせろ!!」

 

 そのまま兵士に質問をする。

 

「は、はい!」

 

 兵士は雪蓮の迫力に圧されつつも話始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 兵士の話によれば、その暗殺者は黒髪の瓜二つの10代前半の男女で店に入ってきたとき店主は「ここはガキの来るところじゃないンダよ。」っと言った。

 

男「僕たち孫策さんの遣いの人にようがあるんだ。」

 

 と言うと、店主は特に何も言わずにその子どもたちを「店の邪魔にならない場所に居るなら」と言って放っておいたそうだ。まさか、店主もこんな子どもが噂の暗殺者だと思わなかったのだろう。

 

 女の子の方の特徴として縦長の大きな袋に入った何かを持っていた。

 

 少しすると徴税に兵士が三人来た。

 

「よぅ、調子はどうだ?」

 

 兵士が店主に話しかける。

 

「悪くはないが、最近は例の噂のせいで売れ行きは落ち込み気味だ。」

 

 と話しかけた兵士に応える。

 

 そういった他愛の無い会話をするがすると、例の子どもたちが近づいてきた。

 

「ン?」

 

 すると兵士の一人がその子どもに気付いた。

 

+男「・・・・・・・・・・・。」

 

「っ!オイっ!おま――――――あっ」

 

 その二つの子どもの形をした殺戮マシーンに、歴戦の勇者ならではの直感から談笑をしている他の二人に危機を知らせようとする。が……

 

 ザクッ

 

 気付いた兵士の腕を短髪の男の子が服の中から片手斧を取り出し叩ッき斬った。

 

「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

 

 店に居る全員が思わず唖然とする。すると、兵士たちが各々の武器をとろうとする。

 

「きゃ、きゃーーーーーーーーーーーーーーー!!!

 

 一人の女性客の悲鳴とともに他の人々の時間も動き出した。

 

 逃げ惑う一般人、武器をとる兵士その全てを殺戮マシーンは標的にした。

 

女「フフフフフ…。大丈夫ですよ。」

 

 女の子は縦長の袋取り、全長8mにも及ぶ両端に刃がついてる長槍を露にした。

 

女「天国は良い所らしいですよ。」

 

 と言うと一般人たちに殺戮を始めた。

 

「ガッ」

 

 男の子は片手斧を一つ、腕を斬り落とした男に投げつけ止めを刺した。

 

「く、糞ガキがーーーー!!!」

 

 剣を振りかざすが怒りから大振りになっていたタメ、軽く両足を一閃された。

 

 そして、残ったもう一人の兵士は援軍を呼びに店の外に走り出ていた。

 

男「香藍(からん)こいつら本当に面白いよ。もっと楽しみたいから走り出た奴は殺さないでねー。」

 

「あ、あぁぁーーーー!!」

 

 ズサッ!

 

 男の子は香藍と呼ばれた女の子に話しかけ、笑いながら足を斬った奴に止めを刺した。

 

藍「えぇ。わかりましたわ、香禅(かぜん)兄様。」

 

 そう返事をすると信じられない速さで走り出し、外に出た兵士に追いつき後頭部を殴打し一撃で気絶させた。

 

 その後、今度は香禅と呼ばれた男の子が店内の殺戮を再開した。

 

 そうして、ワザと店主を生き残された。店主以外は皆殺された、という惨劇を呉の連中に知らしめるため。

 

 気絶させた兵士は引きずって何処かに連れていかれた。

 

 

 

 

 

 

 

 

雪「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 雪蓮は予想以上の惨劇、相手の力量に険しい表情をして黙り込む。

 

雪「わかったわ。冥琳。」

 

 他の人から話を聞いていた周喩を呼ぶ。

 

喩「何だ、雪蓮?」

 

雪「今回の件は思っていたより、かなりきついことになると思うの。」

 

喩「あぁ、それは言われずともわかるが…。」

 

 何が言いたいのだ、といった表情をする。

 

雪「運び屋の連中も動員するわ。」

 

喩「えっ?雪蓮、それは…。」

 

 戸惑った様子だ。

 

運び屋の連中は今でこそ犯罪などをしていないが決して他人の言うことをきく連中ではない。櫓愁の言うことには辛うじて従う奴らもわずかに居る程度である。その上、彼らのほとんどは今は賞金目当てで奔走していた。

 

雪「櫓愁の言うことを聴く連中しか呼ばないから安心して。」

 

 周喩に安心させるようにわずかに微笑みながら言う。

 

喩「あんまり大丈夫なような気がしないがな……。」

 

 当然の感想を述べる。

 

雪「子どもかぁ……。」

 

 そんな、周喩を無視して雪蓮はその子どもについて推察し、つらい表情を浮かべる。

 

雪「気はかなり乗らないけど、とりあえず袁術たちに連絡――――」

 

「孫策様ーー!!」

 

 袁術たちへの形式上の連絡をしようとしたとき一人の兵士が猛ダッシュでこちらに来る兵士がいた。

 

喩「何だ?どうかしたのか?」

 

 雪蓮をかばうように前へ出ると兵士に話をする。

 

「は、ハッ!ご報告いたします。袁術殿が例の犯人の居場所をつきとめたとのご連絡です。」

 

雪「!!!ホントか!!??

 

 これからこの事件を足ががりに、捜索を開始しようという矢先に袁術の迅速な捜索と早すぎる発見に驚く。

 

「ハッ!袁術殿がお話をしたいとの旨です。」

 

雪「……………わかったわ。軍議室に来るように伝えて。」

 

「ハッ!」

 

 一礼をして伝言を伝えに走っていった。

 

雪「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

 

 雪蓮はゆっくりと歩きだした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そうして軍議室には袁術と雪蓮の二人がいた。二人だけだ…。

 

雪「何でたった一日で居場所がわかったの?」

 

 わずか一日でわかったことに疑問を感じる雪蓮。

 

術「あらかじめ目星はつけてましたの。我々は自分が犯人ではないと知っていますし、最大の被害者であなた達でもないとわかります。ならば、消去法で残るのは……。」

 

雪「劉ヨウ……か……。ま、確かに自分たちからも被害者が出てるなら充分言い訳ができるわね。」

 

 袁術からしてみれば当然のことだった。

 

術「ま、わたしたち三人以外の違う方の犯行と思わなくはなっかたですけどね……。」

 

 肩を軽くすくめながら言う。

 

雪「でも解せないわね。」

 

術「??」

 

 何が、と言った表情の袁術。

 

雪「いったい連中は今まで何処に潜んでいたのか…がよ。」

 

術「あぁ…。あなたちに見落としがあったんじゃないですか?」

 

 本心からではなく、茶化すように言った。

 

雪「無いに決まってるでしょ…。」

 

 ブスっとしながら応える。

 

 それにたいして「フフフフ」と笑う袁術。

 

術「簡単なことじゃなくて?」

 

 劉ヨウが来る前は劉ヨウが匿うことはできない。ならば、誰が?答えは単純だ。呉の内部に犯人を匿っている奴がいるということだ。

 

 当然雪蓮はその可能性を考えなっかた訳では無い。だが、彼女はスグにその考えを消した。彼女は君主としてでは無く、一人の同志として仲間を信じていたからだ。

 

術「でも、相手が子ども……ですか…。」

 

 感慨深げに言う袁術。

 

雪「何?もしかして憐れみを感じてるの?」

 

 いつもと違い感情の無い、無情な表情だ。

 

術「当然です。」

 

 軽く笑い、スグに真剣な表情になる。

 

術「その子どもの一生は容易に想像できるでしょ?共感はできないですけど。」

 

 袁術がそう言うと雪蓮は子どもの今までの人生を考えるが表情は変わらない。どんな生い立ちがあろうと自分たちの仲間を殺した相手にかける同情の念は持ち合わせていない。

 

術「少し前に、違う場所で暗殺が起きたの。」

 

 突然話始めた袁術に顔を向ける。

 

術「かなり鮮やかな手口で殺されてたの。結局、犯人は捕まらずじまい。でも、その暗殺者を提供した組織の幹部を捕まえることができたんです。」

 

 顔を上に向け話を続ける袁術。

 

術「その幹部が言うには犯人はもう組織から逃げ出したそうです。そして、その犯人は双子の子どもです…。」

 

雪「!!」

 

 今回の犯人と袁術の話がリンクしていると判り驚く雪蓮。

 

術「その組織の全容がわかりました。その組織では捨て子や孤児を拾い少し育てて変態たちに売り、弄び、挙句の果てには人殺しを教え込んだりなど道具として扱う…。そんな変態たちに食い物にされつつ、例の双子は生き続けた…。そして、学んだ。強い奴らに対してどうすれば生き残れるか、どうすれば大人を悦ばせれるか、どうすれば人を殺せるかを……。その結果、双子は恨んだ。世界の全てを…。」

 

 最後の「恨んだ」は彼女の勝手な考察だ。だが、彼女は知っている。そう言った奴らは色んなモノを恨んでいると。

 

雪「そんなことを話して、今度は何のつもり?正義でも教えよーての?」

 

 雪蓮は嘲笑いながら言う。

 

術「フッ…。いいえ…。正義なんて私にとってはどうでもいいんです。ただ、人に話したかっただけですよ。」

 

 軽く笑いながら言う。

 

雪「そう……。わかったわ。情報提供お礼をいうわ。でも、双子を殺すのは私たちよ。」

 

 雪蓮は袁術に背を向けた。

 

術「はぁ…。わかりました。どうぞ御勝手に…。」

 

 もはや諦めているという雰囲気の袁術。

 

 軍議室を出ると周喩が険しい顔をしながら待っていた。

 

雪「公謹、全軍に出撃準備をさせなさい。」

 

 雪蓮は孫策として周公謹に命令を出す。

 

喩「ハッ!」

 

 周喩も臣下として返事をする。

 

 そして、玉座に諸将が集まった。

 

雪「ん?周泰はどうした?」

 

 見ると明命がいない。

 

愁「あいつなら『例の犯人自分たちだけで捕まえる』だそうだ。」

 

 今回は総力戦ということで招集された櫓愁が応える。

 

昭「まったく、勝手ですね。」

 

 呆れたような表情の張昭。

 

雪「いいわ。言うことを聴かない連中は邪魔になるだけだ。」

 

 無情な表情の雪蓮。

 

雪「でわ、今回の件は皆理解したな?」

 

「「「「「ハッ!!」」」」」

 

 軍議室にいた全員が一斉に返事する。

 

雪「先鋒は凌操だ!」

 

凌操「御意!」

 

雪「ではそれぞれの持ち場につけ!!」

 

「「「「「ハッ!!!」」」」」

 

 そうして、解散する諸将。

 

権「張昭。」

 

昭「何ですか?」

 

 解散する中で張昭に声をかける孫権。

 

権「今回の件いつから、そして、どこまで知っていた。」

 

昭「いつから、どこまでと言われましても、雪蓮様が言われたこと以外知りませんが…。」

 

 何故そんなことを聴くのかといった表情だ。

 

権「いいだろう。今はそゆうことにしておこう。だが、伯符姉様は貴様を信じている。ソレを裏切るな。」

 

 孫権は全てわかっているといった感じで言う。

 

昭「もちろんです。この身は孫呉に、雪蓮様に捧げていりますから。」

 

 張昭がそういうと孫権は背を向け部屋を出ていった。

 

昭「そうです。全ては雪蓮様のタメに……です…。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その頃、酒場で周泰はまた飲んだくれていた。

 

明「プハッ。どうだ?私が色んな筋から得た情報は?」

 

 酒を飲みながら隣にいるルーシェに話しかける。

 

ル「さすがですね。盗賊たちの情報網も侮れないものですね…。」

 

 ルーシェが感心したように言う。

 

一「でもさ、相手は子どもなんだろ?お前たち同情とかしないのかよ…。」

 

 一刀が一般人的な観点から物を言う。

 

ル「それは多少しますけど…。仕方ないんじゃありません?」

 

 わずかに同情の念を示す表情になるがスグに無表情になる。

 

一「仕方ないって、そんな簡単に割り切れんのかよ?」

 

 一刀がちょっと声を荒げて言う。

 

明「うるせぇ!!」

 

 そんな一刀に怒鳴りつける明命。

 

明「おめぇみたいにノホホンと生きてきた奴は黙ってろ!!そういう奴のことは私らみたいな同属の方がわぁってんだよ!!!!」

 

 と珍しく一刀に対して怒鳴り声を上げる。

 

一「なっ!?ふ、ふざけんなよ!!そんなモンで納得できるかぁ!!!」

 

 明命の気迫に負けまいと怒鳴り返す。

 

ル「いいえ。今回はあなたの方が間違っています。」

 

 と、意外なところかろの意見に驚く一刀。

 

一「な、なんでさ!?

 

 納得いかない一刀。

 

ル「あなたは知らないことが多すぎます。」

 

一「それに、知らないことってなんだよ!!」

 

 まだ、納得いかない一刀。

 

明「お前は知らない方がいいことだ。だから姉御たちはお前を信頼してんだ。」

 

ル「そうです。行きましょう、ミンメイ。」

 

 そういうと明命たちは席を立ち店を出ていった。

 

一「ちっ、何だよ…それ…。」

 

 一刀は酒を飲み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして夜になった。

 

 明命たちは運び屋のアウトローな連中と共に今日例の双子が通るという道の脇に待ち伏せていた。

 

 運び屋の連中はまだかまだかと殺気立っている。

 

明「おぉおぉ!殺気立ってるねぇ。」

 

 実に楽しそうな明命。

 

ル「ねぇ、明命。」

 

明「あん?何だ?」

 

 少し離れていたところで静観していたルーシェが明命に近づき話しかける。

 

ル「おかしいとは思わないですか?」

 

明「?」

 

 何がだ?といった表情だ。

 

 わずかに、歩いて連中から距離を置き話始める。

 

ル「だって、この世で誰より双子に復讐したがっているハズの人がいないじゃないですか?」

 

 そう。この場に雪蓮はおろか、呉の兵隊すらいなかった。

 

明「確かに。てことはココにいる連中は…」

 

ル「そう。騙されているってことですね。」

 

 そう言うと明命は悔しそうな顔をした。

 

明「ちっ。城に行って兵士を殴って姉御たちがどこに行ったか吐かせるか。」

 

ル「殴る云々はどうかと思いますが、それが現状では最良でしょうね。」

 

 そうして二人はその場を離れた。

 

 

 

 

 

 

 

 

藍「フフフフ……。残念ですね、兄様。」

 

 笑いながら、少女−香藍−は兄−香禅−に話しかける。

 

禅「そうだね。皆この楽しさを知らないなんて…。」

 

 そう言うと香藍の手を握る。

 

 ガチャっ

 

 すると、部屋のドアを誰かが開けた。

 

「おい!っっ!!!!!」

 

 入ってきたのは劉ヨウの部下の一人だ。

 

 何か話しがあったのであろうが、彼はこの部屋に漂う血の匂い、そして、その匂いの元凶を見て絶句する。

 

「お、お前ら、な、何し――っ。」

 

 どうやらあまりの惨状に吐き気を覚えたらしい。口元を押さえ膝を着く。

 

 彼が見た光景は前日捕らえた呉の兵士をイスに縛られていた。その兵士は前回の兵士同様、爪を剥がされ、指を折られていた。だが、肋骨は無事だ。その代わりというのか、両足の脛(すね)、太腿(ふともも)、両腕に、そして、頭に目算不可能なほどの釘が打ちこまれていた。さらに、胴体の一部は皮が剥かれ肉が見えていた。

 

「て、てめーら誰がそいつをハリセンボンにしろって言ったんだ!!」

 

 一緒に来ていたもう一人の男が叫ぶ。しかし、恐怖から声が震えていた。

 

 そんな男たちを見て嬉しそうに話し始める。

 

禅「面白いでしょ?頭に釘を打ちこむとね、死んだ後でもビクッ!てなるんだよ♪おじさんたちもやってみる?」

 

とっても楽しそうに男たちに提案をする。

 

「ふ、ふざけんな!!てめーらなんかな、劉ヨウ様が殺せって言えばいつでも殺せるんだぞ!!!」

 

 声を震わせながら怒鳴る男。

 

+藍「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

 

 二人は黙り、わずかに微笑みながら男たちを見る。

 

「っっ!!!」

 

 そのプレッシャーに負けたのか、吐きそうになっている男に肩を貸し部屋を出ていった。

 

「くそっ!あの糞ガキ!!あれを片付けるのは俺たちなんだぞ!!」

 

 悪態を吐きながら廊下を歩いていった。

 

藍「『あれ』ももうダメ…ですね。」

 

禅「そうだね…。そろそろ潮時だね。」

 

 そう言うと二人は立ち、部屋を出ていった。

 

慈「劉ヨウ様、今ならまだ間に合います。奴らを捕まえたと言って差し出せば――――ぐっ」

 

 違う階の一室に劉ヨウたちはいた。

 

 太史慈は劉ヨウに提案をするが、劉ヨウは太史慈を殴った。

 

ヨウ「ふざけんな!!てめぇは俺の言うことをきてりゃぁ良いんだよ!!」

 

 バキッ

 

 またも太史慈を殴る。

 

慈「ハッキリ言わせて頂きますがアレは我々、いえ、人では扱えきれま―――っ!」

 

 しかし、今回はそのまま黙ることはなく劉ヨウの説得をしようとするが、またも殴られる。

 

ヨウ「黙ってろ!!くそっ!!!あの干吉ってヤロー!!アレなら孫策も簡単に殺してくれるって言うから使ったのに、あいつら好き勝手に暴れやがって!!」

 

 怒鳴り声を上げる。

 

「っ!!」

 

 部屋の入り口に双子がいた。

 

ヨウ「て、てめーら、ここには来るなって…。」

 

 明らかにビビリながら双子に注意をする。

 

+藍「フフフフフフフフフフフフフフフフ………。」

 

 不気味に笑いながら前に進み出る。

 

慈「っ!!劉ヨウ様!!!お逃げください!!!!!!」

 

 双子は武器を取り出した。

 

 

 

 


あとがき

 

ども、冬木の猫好きです。

 

えぇ〜〜、すみません。戦闘の予定だったんですが思ったより前ふりが長くなりました。

 

今度はちゃんと戦闘になるんで宜しくお願いします。 





何か事件が起きてる。
美姫 「いや、そんな呑気に」
まあ、かなり大事にはなっているみたいだけれど。
うーん、しかし黒幕は張昭で良いのかな。
美姫 「裏では于吉とかが絡んでいるっぽいけれどね」
さてさて、どうなるのかな。
美姫 「この事件の結末は!?」



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